2020年春夏ウィメンズの海外コレクションが終了した。“ネイチャー”や“セブンティーズ”など、さまざまな要素がシーズントレンドとして浮上したが、実際に日本の街で広がりそうなスタイリングやアイテムはどんなもの?日本市場を熟知した百貨店やセレクトショップのバイヤー、ディレクターに、20年春夏をどう捉えたかを聞いた。
WWD:2020年春夏の海外コレクションではどんな点に注目した?
鈴木春バーニーズ ニューヨーク ウィメンズファッションディレクター(以下、鈴木):ストリートファッションのトレンドによって、ここ数年は着崩すスタイリングが中心でしたが、“ちゃんと着る”という気分が強まってきています。その流れでジャケットやボタンダウンシャツが広がっているし、シューズでもスニーカーではないフラットシューズが出てきています。うちの店では買い付けてはいませんが、ウィメンズもメンズも「セリーヌ(CELINE)」の影響は非常に強いと感じます。デニムパンツにも紺のブレザーを羽織ったり、ボタンダウンのシャツを合わせたりといった「セリーヌ」のムードは、市場全体に影響を与えています。
「セリーヌ」が19-20年秋冬で出していたキュロットと同じ気分のアイテムは、既に今秋冬の店頭で動いています。背が低めのお客さまには「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のひざ丈キュロット、高伸長の方には「ザ・ロウ(THE ROW)」の短め丈といった具合に、各ブランドがさまざまなデザインを出していて、ニーズをとらえています。20年春夏では、「マディソンブルー(MADISON BLUE)」「オーラリー(AURALEE)」などの日本ブランドからもキュロットが出ていたので、いっそう広がりそうです。
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WWD:色や柄などで注目しているのは?
鈴木:麻やローシルクの生成りやベージュなど、素材そのものを感じさせる色がベースになりそうです。色もマゼンダ(赤紫)やピンク、グリーンなどが出てきていますが、今シーズンはポイントとしてそういったカラーを使うというよりも、全身を同系色でそろえるのが気分です。グリーンを取り入れるならカーキを合わせるといった具合にトーンを統一した方が決まります。柄では小花などが広がっていますが、正直あまり気になっていない。それよりもレースやメッシュなど、質感が分かる素材が気分です。
ブランドとして印象に残っているのは、店頭でも好評な「ザ・ロウ」「ドリス ヴァン ノッテン」などの他、若手ではパリの「ロック(ROKH)」が新鮮でした。
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WWD:今季はこれまで以上にサステイナビリティーにフォーカスが当たっています。実際、店頭ではサステナイナビリティーを意識した商品が売れるのでしょうか?
鈴木:売れるかどうかというより、そもそも今の時代はサステイナビリティーを考えずしてブランドを運営することはできないんだと思います。SDGs(国連による持続可能な開発目標)も17もの項目があるから、この業界で働いていたら必ず何かしら関わってきます。20年春夏はバーニーズ ニューヨークとしても、長期的にサステイナビリティー関連の施策をしていきます。既に、一部店舗では着なくなった商品の回収を試験的に始めました。
(女性がより活躍できるように、生きやすくなるようにといった視点では)職場でのハイヒール強制に疑念を呈す#KuTooのムーブメントが広がったことを受けて、履きやすくておしゃれな靴を探したり、フラットシューズでの上手なスタイリングを提案するための女性だけのプロジェクトチームを発足しました。徐々に世の中にプロジェクトの成果を伝えていければと思っています。