「鎌倉シャツ」の愛称で知られるメーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)は、中国1号店を上海に11月7日に開く。同社が海外に常設店を設けるのは、米国に続き2カ国目。先行するECとの両輪で中国のビジネスウエア市場に挑む。
上海有数の商業地である南京西路の複合施設「静安ケリーセンター」に出店する。売り場面積は鎌倉本店を上回る132平方メートルで、店内にはシャツの袖やパンツの丈を修理するガラス張りのお直し工房を併設する。ECへの移行が進む中国での事業拡大を見据えて、親身な接客、買ったその場で職人が修理するお直し、パターンオーダーなどリアル店舗ならではのコミュニケーション機能を強化する。シャツの中心価格499元(6986円)と日本との内外価格差を1.2倍程度に抑えた。
中国進出を決めたのは、日本でのインバウンド(訪日客)消費や中国向けの越境ECなどで手応えがあったからだ。
今年1月に中国EC最大手アリババのTモールに出店した。越境ECでの昨年1年間の売上高が1億円だったのに対し、Tモールでは9カ月間で2億円を超えた。昨年12月と今年6月に上海で開いたポップアップストアも好評だった。中国プロジェクトを指揮する貞末奈名子常務は「当社の銀座店で買い物をされたことのあるお客さまが予想以上に多かった。年に数回、来日されている方も珍しくなく、鎌倉シャツのことをよく知っている」と話す。12年に出店したニューヨークのマディソンアベニュー店もブランドの知名度アップに貢献した。
中国のドレスシャツの相場は百貨店で800元(1万1200円)ほど。日本と同様に高品質で値ごろなメード・イン・ジャパンのドレスシャツは、競争力を発揮できると見ている。貞末良雄会長は「上海をはじめ中国の大都市では世界を飛び回るビジネスマンが多い。彼らはワイシャツの着こなしのルールをよく知っており、鎌倉シャツの価値は伝わる」と自信を深める。
実物に触れられるリアル店舗と、自分のサイズさえ分かっていれば気軽に注文できるシャツの特性を生かして顧客拡大を図る。同社は日本で年間約80万着を売っている。貞末会長は「まずは1号店を軌道に載せることだが、中国は日本以上の潜在需要がある」とみる。
鎌倉シャツは現在、国内28店舗、米国1店舗を展開。19年5月期の売上高はリアル店舗が45億円、ECが11億円だった。