「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)は、ラグジュアリー・ファッションと環境問題に関するアイデアを競い合うハッカソン、「ハック・トゥ・アクト(Hack to Act)」をパリで10月5日と6日の2日間にわたって実施した。同社では初の試み。
ハッカソンとは、ソフトウエアのエンジニアリングを意味する“ハック(Hack)”と“マラソン”を合わせた米IT業界発祥の造語で、もともとはプログラマーやデザイナーなどで構成された複数のチームが数時間から数日間かけてマラソンのように集中的に作業をし、技術開発などを互いに競い合うイベントを指す。現在は商品開発や人材育成などのため、さまざまな業界で行われている。
最近は南米アマゾンの熱帯雨林で発生した火災が大きな話題となったり、気候変動の危機を訴える「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」が世界各地で行われたりするなど、環境保護に対する消費者の関心がこれまでにないほど高まっている。ケリングはサステイナビリティーに関する先進的な取り組みで知られており、2015年にはバリューチェーン内で発生する環境負荷をコスト化した環境損益計算書(EP&L:Environmental Profit and Loss)を開発してオープンソース化している。今回のハッカソンには、候補者250人の中から選ばれた80人余りのソフト開発者やエキスパートなどが参加。各チームは提供されたEP&Lデータに基づき、ラグジュアリー製品の生産・販売が環境に与える負荷を軽減するアプリケーションなどを開発した。
最優秀賞には、既存アプリケーションの機能を拡大し、顧客がブランドもしくはそのシーズンのコレクションの中からより環境にやさしい製品を探すことをサポートするという「コア(Core)」プロジェクトが選ばれ、開発チームには賞金1万ユーロ(約117万円)が贈られた。
ホストを務めたマリー・クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)=ケリング チーフ・サステイナビリティー・オフィサー兼国際機関渉外担当責任者は、「当社が掲げているサステイナビリティーに関する目標値を達成するに当たっては、テクノロジーとイノベーションが鍵となる。今回のイベントは、EP&Lデータをデザインチームやサプライチェーン、顧客が幅広く利用できるようにするプロジェクトが提案されるなど大きな成果があった」と語った。
審査員は、ケリング傘下の高級時計ブランド「ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)」と「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」を率いるパトリック・プルニエ(Patrick Pruniaux)最高経営責任者、アントネッラ・セントラ(Antonella Centra)=グッチ 総務・サステイナビリティー部門EVPジェネラル・カウンシル、ニコラ・ポレイヨン(Nicolas Polaillon)=ケリング データ・CRM・AI担当ディレクター、パヴァン・スクデフ(Pavan Sukhdev)世界自然保護基金(WWF INTERNATIONAL)総裁、オマー・マフムード(Omer Mahmood)=グーグル(GOOGLE)グーグルクラウド カスタマー・エンジニアらが務めた。