※この記事は2019年5月15日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
メディアの行方
デジタル化が進み、オンオフあらゆる場面で地殻変動が起きています。素材開発から生産・物流、売り方まで、ファッション業界に携わる皆さんも、まさに「今が変革期だ」と実感しているのではないでしょうか?
メディアで働く私たちも例外ではありません。紙とウェブ。どのコンテンツをどの形態で読者へ届けるのが最適か、有料であるべきか、無料であるべきか。これだけ情報があふれる時代に、どう記事に目を留めてもらうか。私たちも目まぐるしい環境の変化にさらされながら、常に検討・模索しています。
そんな中、飛び込んできた「ヴォーグ(VOGUE)」擁する名門出版社、コンデナスト(CONDENAST)の新グローバルCEOが音楽配信会社出身者だというニュース。「これは、英断だな〜」と感じました。
新CEOに就任したロジャー・リンチ(Roger Lynch)氏は米音楽配信サービス、パンドラ(PANDORA)のほかにも、テレビのストリーミングサービスのスリングTV(SLING TV)でCEO、衛星放送のディッシュ・ネットワーク(DISH NETWORK)で要職を務めてきた、いわばオンラインサービス業のプロ。これまでアメリカとその他の国で経営が分かれていたコンデナストの統合とデジタル化の推進、米社の黒字化という“大手術”は、内部の人材では不可能だという判断です。
異業種出身のトップによる変革は、“出版”を守り続けてきた幹部からの抵抗も大きいかもしれません。しかし、もはや待ったなしの状況でもあります。出版の経験がないリンチ氏だからこそ、「ヴォーグ」や「GQ」「ワイアード(WIRED)」「ザ・ニューヨーカー(THE NEW YORKER)」などを抱え、100年以上の歴史がある出版社を、サービスに富んだ21世紀型のメディア企業へとドラスティックに転換させるかもしれません。
業界に絶大な影響力を誇る米「ヴォーグ」編集長、アナ・ウィンター(Anna Wintour)女史とはウマが合うのだろうか?そんな野次馬な興味もしのばせつつ、リンチ氏の改革でコンデナストがどう変わるのか。注視していきたいと思います。
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