ファッション
連載 「見たい景色」を目指す元バイヤーの独立日記

「独立して見たい景色を目指して。人を想い、なりたい私をぶっ放す」Vol.1 会社辞めちゃいました

 「会社辞めちゃいました。税務署行っちゃいました。独立しちゃいました」。

 この新連載を、そして私の新たな人生の幕開けを、こんな言葉で始めてみたっていいと思うのです。だってファッション業界だもの。

 ハッピーなファッション・マインドを持ち続けたいと思うし、それ無くしてお洋服を商売にしてはいけないと思うのです。

 セレクトショップを全国展開する某大手アパレル企業を今年8月に退社し、13年間担ってきたバイヤー職とその味わい深い重圧、楽しみきれなかった会社生活を全部やめました。

 理由はカンタン。刺激もなくなり、つまらなくなったから。

 こんな事を言い出せば多くの人に怒られそうですが、もっと楽しくお洋服に触れていたいし、余計な事情を抱えるあまり、より良いものに目をつぶることはしたくないんだよと。

 バイヤーは、バイヤー自身の審美眼といつも戦っていて、誰かと相対する時はいつも真剣勝負なんだよと。事業上の簡単な言葉一つで、作り手の想いや世の中に聞いてほしい意志はお客様に伝わらないのよ。これらを大切にできなきゃ、自動販売機で十分なんじゃないかと……なんて(笑)。そんなイロイロな事情もあったりで、「喜び」がファッションなんだと信じる方を選んでみました。

 でも結局は大きな感謝しかないのだけれど。

 バイイングのことなんて右も左も分からなかった私に会社は、当時誰もやりたくなかった大御所の後釜を担当させてくれました(笑)。いつもとんでもないプレッシャーを抱えていたけれど、大きなセレクトの名を背負わせていただいて、それなりには人のために、少しくらいはお取引ブランドのために、何よりもお客様のために、昼も夜も走り回った時間は格別で、今もなお充足感があり、人とは違う日常でありました(笑)。買い付けに関わる業務事、ブランドの諸先輩方の熱いお話、知識や経験、新しい情報など、多くの社外の方々にお世話になり、今があることは疑いの余地などありません(「WWD JAPAN.com」の要編集長もその1人なのですww)。

 この恩をできる限り多く返していきたいと、それには私自身の環境を変えることから始めたいと、独立して地に足つけて頑張りたいと。そんなハッピーな風景と人を想って、なりたいようにやりたい。子どものようかもしれないけれど、一生懸命にやりたいって想いなんですよね。

 ですからこの連載では、ファッションに携わる方々とのあれやこれ、ファッション・ウイークの風景と想うこと、新しく始めていくプロジェクトなんかの日常、この業界にいる人間との全力の遊びも含めて発信していきます。

 とは言いつつも、せっかく独立するんだから「週休3日制」を貫くと周囲に豪語している私としては、若い世代がワクワクするような本気の遊びを通してファッションを感じ取ってほしいとも願っているので、シャレた人たちが持っている“遊びの中の本気”を数多く寄稿しますのでお楽しみに~。

 そんな訳で、辞めてすぐに税務署いっちゃいました~。

 まずは個人事業主となるべく江東西税務署へ、見た目いかついファットバイクなる電動自転車で乗り付け。派手めな格好でカッチカチな建物へ入り、スマホカメラをカウンターへ向け、すぐに注意を受けました(笑)。

 当然のことですが、館内は撮影NGなので皆様ご注意くださいwww。

 事前に用意していた開業届を担当窓口で提出。紙ペラ1枚提出して、ハイお終いです(笑)。個人情報と事業内容を明記し、個人事業に使用する「屋号」を決めて押印するだけ。会社設立とは違い、あくまで個人で事業開始します宣言なので費用もかからずスタートです。「こんなに簡単で良いの?」って思うくらいの5分間。私の「屋号」は10年程前から心にしていたので躊躇なく決まりました。その名前が他社様と被っていないことを事前に調べてから記入しておきましょう。

 さて、こんな風に適当に思われそうな感じで始まった独立ですが、実はずっと考えていたことであり、本人は真剣であります。その決意と私にとっては普遍的とも言える想いを、そのままタイトルとしたのが「屋号」。「1H basix(ワンエイチ ベイシックス)」というのがその名前です。

 と、ここまでを蔵前にあるオサレカフェのNuiで書いたところでまさかの大御所登場(笑)。ミハラヤスヒロ先生が突然目の前に現れ、急遽、赤のグラスからの焼肉になりました~ww。というわけでこの続きは次回に持ち越します(笑)。

 次回は勝手ながらこの「屋号」への想いについて発信しようと思います。できる限り毎週寄稿しますので宜しくお願い致します。

井上智和:1981年生まれ。東京生まれ東京育ちのCITY BOY。中央大学商学部を卒業後、三陽商会に入社し、店頭研修後に「バーバリー・ブラックレーベル」で販売トレーナー及びVMDを担当。3年目の終わりに「ラブレス」に異動しバイヤーに。国内外ブランドの開拓・買い付けをしながらセレクトショップの運営を学び、直近はバイヤーの他にプレス・販促・販売の長を兼務しながらリテール事業を経験。15年在籍の後に退社し、現在は「1H basix(ワンエイチ ベイシックス)」の名を冠して独立。ファッション・ライフスタイル領域のセレクトにて、アドバイジングやディレクション、買い付けを行なう傍ら、大人の本気遊びを体現し記事執筆を行う

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