ミラノ・ファッション・ウイークで発表された「マルニ(MARNI)」の2020年春夏コレクションは、ハンドペイントや刺しゅうなどで花をあしらった色とりどりのウエアをそろえ、環境問題に向き合う“花の戦士”を表現した。
そんなメッセージ性の強いコレクションを語る上で欠かせないのが、ヘアアーティストのジュリアン・ディス(Julien d’Ys)の手掛けたヘアだ。芸術性の高いスタイルで知られる彼は今回、3色のクレイを使用。オールバックでまとめたモデルの髪にクレイをたっぷりと塗り、ドライヤーとスプレーで固めた。そして、そこに生花や大きな葉、ドライフラワー、ラフィアなどを自由に組み込み、一人一人異なるスタイルを作り上げることで、さながらアート作品のヘアを完成させた。
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「コンセプトは“saving the planet(地球を救うこと)”。ジャングルで暮らす強くワイルドな女性が現れたようなイメージだ。彼女たちはあらゆることにクレイを使う。それが、今回クレイを使った理由だ」とディス。「ブラジルのアマゾンが燃えていたりと世界で今起こっていることや地球をケアしなければいけないという強い思いが、花に溢れたコレクションを生み出した。そして、1960年代の権利を求め抗議運動をする強い女性たちや、(「武器ではなく花を」)という反戦のメッセージにつながった。だから、私は花や植物を取り入れたんだ。ただし、トライバルではなく、オーガニックな“生き物”のように仕上げることを意識した」とこだわりを語る。
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また、「いつもは『コム デ ギャルソン』のショーしか手掛けない」という彼が今回「マルニ」に参加したのは、フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)=クリエイティブ・ディレクターのクリエイションに共感したから。「フランチェスコは夢にあふれた人で、彼がやっていることを見てきた。一緒に仕事をするのは初めてだったが、とても嬉しかったよ。今回のコレクションには、私がふさわしかったのだと思う。ノーマルであることは嫌いじゃないが、つまらないものに興味はないので、私は何かが起こるようなショーだけを手掛けている」。ミラノでは今季、「マルニ」に加え、ピカソの作品から着想を得た「モスキーノ(MOSCHINO)」のヘアも担当した。
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メイクのリードを務めたのは、ニューヨークを拠点に活躍するメイクアップアーティストのカブキ(Kabuki)。パウダーの印象も感じさせないような完璧でミニマルなルックを目指した。全体的に色味を使わずナチュラルに仕上げているが、運動後のアスリートの頬が少し赤らんだ状態をイメージしたチーク使いがポイントになっている。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める