大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDファッション」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
今日のニュース:P.3「EDITOR’S VIEW 『AKIRA』と『ブレードランナー』の2019年」
読み解きポイント:テクノロジーを見えなくして、生活に溶け込む
ニュースのポイント
2019年は、未来のテクノロジーと主人公の人間臭いリアリティーを内包した、マンガ「AKIRA」とSF映画「ブレードランナー」の舞台となった年だ。10月5日、「リーバイス(LEVI’S)」は導電性繊維を組み込んだトラッカージャケットを発売した。最大のポイントは、テクノロジーを見えなくすること。現代人が中毒状態のスマートフォンから目を離し、世界にもっと目を向けさせるためのものであると「リーバイス」のバイス・プレジデントは語る。
CKRはこう読む!
「Ubiquitous Computing(ユビキタス・コンピューティング)」。パロアルト研究所の技術主任であった「マーク・ワイザー(Mark Weiser)」が1988年発表した「The Computer for the 21st Century」の中で使い始めた言葉です。
グーグルで「Ubiquitous」と画像検索してみると、「IoT」や「さまざまな端末がネットワークを通じて繋がるイラスト」が表示されます。どのイラストもコンピューターが溢れかえっている様相です。マーク・ワイザーが、ユビキタスコンピューティングの中で強調していたことは、「Invisible(見えない)」。のちに「Calm Technology」としてコンセプト化されました。コンピューターが溢れかえる様子とは真逆の、コンピューターが環境に溶け込み、さりげなく人の活動を支えることを示唆しています。
コラムにもある「テクノロジーを見えなくすること」は、サービスをデザインする上で最終形の一つかもしれません。例えば電気をつけるとき、私たちは電力技術についてほとんど考えないですよね。この場合のテクノロジーは意識するものではなく、当たり前のインフラとして生活の中に溶け込んでいるからです。
スマートフォンも、パソコンが生活に溶け込んだ一つの形です。中身はパソコンそのものですが、「Phone(フォン)」という名前をつけたことで当時、多くの人に行き渡っていた携帯電話の代わりと認識され、一気に普及しました。○○コンピューターという名前だったら、一部のマニア向けの製品になったかもしれません。
「リーバイス」のジャケットも、今はスマートフォンを操作するためのインターフェイスとしての機能が中心ですが、直接ネットワークに繋がるようになると、さらに利用シーンが広がる可能性があります。服は、身体の一番近いところにあります。今後は、さりげなく身体状態をモニタリングして、人の健康を支えるためのインフラとして溶け込んでいくかもしれませんね。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中