ビューティ

コスメ事業本格参入のサザビーリーグ 立役者3人が語る、大人が輝くビューティブランドとは?

 サザビーリーグがオリジナルコスメ「グリッド(GRID)」をスタートした。10月1日からセレクトショップのロンハーマン各店とECサイト「エルショップ(ELLE SHOP)」、ヘアサロン「ハプス(HAPP’S)」で先行販売し、11月20日には伊勢丹新宿本店本館1階化粧品売り場のリモデルに合わせて1号店をオープンする。常設店デビューが百貨店化粧品1番店という華々しいデビューを飾る。

 同ブランドは、中嶋竜司ヘアメイクアップアーティストが監修し、「年齢を重ねてもなお魅力的に輝きたい」と願う大人の女性に向けて開発。メイクアイテム10品11種(価格は3500~6800円)をそろえた。

 ファッション業界をけん引してきた同社がビューティ事業に本腰を入れる今回、中嶋ヘアメイクアップアーティスト、根岸由香里サザビーリーグ リトルリーグカンパニー カンパニーオフィサー ロンハーマン事業部長 兼 ロンハーマン ウィメンズ クリエイティブ ディレクター、八木亮代サザビーリーグ リトルリーグカンパニー グリッド ディレクターの3人に参入の狙いとブランドに込めた思いを聞いた。

WWD:オリジナルコスメを立ち上げた理由を教えてください。

根岸由香里ロンハーマン事業部長 兼 ロンハーマン ウィメンズ クリエイティブ ディレクター(以下、根岸):リトルリーグは洋服に限らず面白いことをやっていこうという考え方で動いていて、さまざまなカテゴリーに広がる中、弊社が運営するリラクゼーションサロン「センスロンハーマン(Sense Ron Herman)」の責任者である八木と、ヘアメイクアップアーティストの中嶋竜司さんとの出会いから始まりました。竜司さんは長年メイク業界で活躍しキャリアを積み、次は積み上げてきたものをプロダクトに落とし込んで、世の中の女性をハッピーにしたいと考えていました。そうした竜司さんの考えと、リトルリーグの考え方とがフィットしてプロジェクトがスタートしました。

WWD:具体的には?

根岸:ロンハーマンでスタッフに言ってきたのは、ファッションやコーディネートは洋服だけではないということ。素敵なコーディネートをしたお客さまにより素敵になってもらうためには、メイクやヘアのアドバイスまで提案できたら最高だよねと話していました。私たちがしたいのは、メイク感ゼロだけど洋服が素敵に見える、ファッションに合うメイク。そうした思いを話す中で、竜司さんが提案してくれたメイクを形にしたのが「グリッド」です。世の中の一般的なメイクは、まず下地を塗ってその上にファンデーションをしっかり塗って重ねていくものですよね。私たちは撮影現場で竜司さんやプロのヘアメイクさんの技を目にする機会があるので、ファンデーションを使わずにその人の美しさを引き出すメイクがあるということを知りました。ただ、それを簡単にできるコスメが世の中にはない。だったら自分たちで作ろうということになりました。竜司さんが提案する、その人自身が魅力的になるようなメイク、隠すのではなく素を引き出すメイクはリトルリーグの考え方とマッチしています。ヘルシーでナチュラル。私たちが10年やってきたほかの事業と同じでした。

WWD:ナチュラルメイクやすっぴん風メイクとは違うのでしょうか?

根岸:どんなに薄づきのファンデーションでも膜感がありますよね。そうした“膜”や“覆う”のではなく、艶を与えて肌をイキイキと見せるメイクです。ビンテージデニムに白いTシャツみたいなカジュアルの王道を着たいときに、マットなファンデーションは似合いません。「グリッド」のメイクは気になるところは隠すけれど素肌のよう。似ているようで全然違うというのが自分で試してみた感想です。

ファッションに合う、素肌のような艶のある肌作りが鍵

WWD:それを可能にするキーアイテムが「スキンベール」ですか?「スキンベール」とはそもそもベースですか?ファンデーションですか?

八木亮代グリッド ディレクター(以下、八木):「スキンベール」は、ファンデーションではないし下地でもない新カテゴリーです。このアイテムがすごいのは、色展開はなく1種類のみなのですが、日焼けをしている人や色黒の人、色白の人もカバーするところ。それがファンデーションと違うところです。偏光パールでアラを飛ばしながら、加齢によって失われていく艶や透明感をうまく出してくれます。そうした視覚効果と11種の美容成分を配合したスキンケア効果も兼ね備えています。

中嶋竜司ヘアメイクアップアーティスト(以下、中嶋):どんな肌色にも合う不思議なものを作りたかったんです。「スキンベール」は日焼けしている人が顔に塗っても、首から下の肌色と違ってしまうなんていうこともありません。メーカーをいろいろと探して、100近く試作品を作って出来上がった商品です。

八木:大人の女性に向けて開発をしたので、エイジングケアができて顔がくすんで見えない、明るく見えるための成分にこだわりました。抗酸化、抗糖化力のあるものやアンチポリューションに働くものですね。30代後半から女性はホルモンバランスが変わるので、肌も若い頃よりデリケートになります。その点でも「スキンベール」にはなるべく天然由来の成分を多くして、刺激が少ないものを選んでいます。

WWD:「スキンベール」1本で肌作りは完了するのでしょうか?

八木:年齢を重ねた肌は「スキンベール」だけでは足りない部分が出てきます。そのためシミ、そばかす、ニキビなどの赤みなどをカバーする、厳選した3色のコンシーラーパレットを作りました。カバー力があるものを全体に塗るのではなく、必要なところに塗るだけで、仕上がりが全然違うものになります。さらに、粒子の細かいマットルースパウダーで微妙に艶を調整します。両方を使うことで「グリッド」の肌が完成します。

中嶋:パフにもすごくこだわっていて、今は化学繊維のパフが多いですがコットンのパフにしています。化学繊維は粉がパフの中に入っていかなくて表面にべたっとつく。コットンは粉が中に入り込んで必要な分しか出てこないので、微量を調整しながらつけることができます。10品のメイクアイテムは必要最低限、これだけあれば大丈夫というものを作りました。

八木:リップペンシルは2色、アイブロウマスカラは1色、チークも1色しかありませんが、これさえあればどんな肌色の人にも合います。チークは茶色やピンクが入ったテラコッタカラーで、軽く上気したような顔色のいい表情に仕上がります。

ビジネスにおいて大事なのは関わる人の情熱や強い思い

WWD:ファッション業界発信のコスメで成功しているブランドはなかなか少ないですが、成功していくためにはどういった展開が必要でしょうか?

根岸:そこは簡単ではないと思っています。ロンハーマンではスキンケアやボディーケア、ヘアケアの取り扱いはありますが、メイクアップを扱うのはこの10年で初めてのこと。ロンハーマンなのか、ほかの洋服のセレクトショップなのか、あまりがちがちに考えずに、「グリッド」の考え方に賛同してくださるところと取り組みたいと考えています。今は新業態が次々に生まれて、化粧品を売る場所も広がり一昔前とは違っています。価値観がつながっていけば成功すると思うので、通常のコスメブランドの戦略とは違うと思っています。王道は百貨店にたくさん出店して、毎シーズン新作を発売するとういのがセオリーだと思いますが、「グリッド」はそういうブランドではなく、新作はゆっくり時間をかけて出せばいいと思っています。すぐに利益を出すのは難しいでしょうが、リトルリーグ内、サザビーリーグ内全体で考えて、ゴールを急がず徐々に育てていきたいと思っています。

WWD:接客もファッションとは大きく違います。他業界からの参入はそこでつまずいていると感じます。

根岸:この商品はお客さまにしっかりと使い方を理解してもらうことが大切だと考えていて、一番いい形で使っていただかないと、リピートしていただけない。使い方やよさが伝わるプロモーションについては考えていて、そこには投資していかないとだめだと話しています。

WWD:ビューティ業界から入るスタッフはいますか?

根岸:リトルリーグにはもともと美容業界や異業種から来た人がいます。今後の広がりとしては、経験者だけではなく同じ考え方を持って伝えていける人、という点を重視します。結局は人柄だと思っているので、絶対にビューティ業界出身でなければというわけではありません。メイクのバックグラウンドがある人を拠点に1人は立てて、スタッフの勉強会やお客さまへのリタッチといったサービスの提供はしていく予定です。

WWD:「グリッド」の今後の展開と将来像を教えてください。

根岸:伊勢丹新宿本店でのショップオープンを皮切りに、いい場所があれば広げていきたいと考えています。ブランドとして単体で一人歩きさせていく計画です。今の時代、そぎ落としていく、大事なモノだけにフォーカスしていこうという流れもあり、「グリッド」は誕生しました。弊社がビジネスにおいて大事にしているのは、関わっている人の情熱や強い思い。それが強いほど成功しています。新しい挑戦ではありますが、コスメ業界の枠にとらわれすぎずに、新しい道を模索していきたいです。

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