約10分で眠らせる頭ほぐしで、その快感から現在約49万人が予約待ちに並ぶ無水ヘッドスパ専門店「悟空のきもち」を運営するゴールデンフィールドが、“布団の全てを否定する”「睡眠用うどん」(価格は1万6800円)を発売した。発売初月に2億円の売り上げを叩き出し、さまざまなメディアでも取り上げられている。そのヒットにはち密に計算されたモノ作りがあった。
製品の見た目は、巨大なうどんを数本並べて作ったような布団だ。同社によると“布団”と呼ぶのはNGとのこと、あくまで“うどん”なのだ。開発のきっかけは、ざるうどんを食べながら「この中で寝たい」と言った同社スタッフの声。そこから「悟空のきもち」が企画し、伊勢丹新宿本店の意見協力のもと、深部体温と睡眠の深さを追求。約1年の研究開発期間を経て、世界初の睡眠に特化した「睡眠用うどん」の完成に至った。
「睡眠用うどん」を使用するメリットは3つありそうだ。1つは、寝姿がいつでも自由でいられるという点。掛け布団のように使う“掛けうどんモード”を基本とし、“抱き枕モード”“足枕モード”“包まれモード”など麺を動かすことで自在な寝姿を作ることができる。麺を動かすという発想、それを可能にするモノ作りがキモだ。2つ目は、温度調整機能に優れているという点だ。うどんの麺の開閉を寝ながら自在に行えることで、夏はタオルケットより涼しく、冬は内部空気量が高いことから毛布1枚掛けただけで防寒布団より暖かくなるという。
3つ目は、入眠・睡眠に適切な深部体温の切り替えを促すという点。すぐ眠るために必要な温かさと、深部体温を下げて深い眠りを作る施術メソットを応用。眠る前・寝た後の最適な温度変化をもたらすという。単なる見た目の面白さだけではない科学が、この“うどん”には秘められている。外部試験機関で「睡眠用うどん」で寝たときと普通の掛け布団で寝たときの脳波を比較する科学的検証を実施。その結果、日本人の被験者6人の平均値で、掛け布団に比べて「睡眠用うどん」は、リラックスを表すα波が4.3%増加、緊張感を表すβ波が6.2%減少したことが分かった。6人が多いか少ないかは分からないが、リラックスできることは確かなようだ。
ゴールデンフィールドのヒットを生み出す力
そうしたメリットを踏まえ、同社は「入眠や睡眠中、起床後の爽快感など、どの側面で見ても“ふとん”より“うどん”が優れている」と考え、“布団の全てを否定するうどん”として展開した。発売開始直後から寝心地の良さで話題となり、発売1カ月の時点で約1万4000個を受注し、売り上げは2億3000万円に到達した。
12月からは、生産を当初の20倍規模の月1万個体制まで増強。今後エビデンスを重ねていき、来年からは中国やアメリカへの輸出も計画しているというから“うどん”は世界に羽ばたくことになる。
そもそも同社が展開する「悟空のきもち」は、4店舗全て3カ月満席、それに加え48万6098人(8月集計数)がキャンセル待ちに並ぶ人気のヘッドスパ。そして今回発売した「睡眠用うどん」も、早くも大ヒットしていることからも、同社は“気持ちいい”“癒し”の請負人か。
それらのヒットの要因は、キャッチコピーのセンスもある。「悟空のきもち」は“眠くない大人でも約10分で寝落ちさせる”、「睡眠用うどん」は“眠れるうどん”というキャッチコピーで展開していて、どちらも耳にした人に「え!?」と思わせる力を持っている。これが“睡眠導入効果のあるヘッドスパ”“新発想の布団”といったインパクト薄めのキャッチコピーであったら、ここまでのヒットにつながったか疑問に思える。
さらに前者は世界中のマッサージメソッドを調査・研究することで、後者は科学的検証も含めた睡眠メカニズムの研究で、キャッチコピーの通りの効果を実現した。柔軟で豊かな発想力とブレイクスルーをもたらす研究開発力を併せ持った同社の、次の新作はどんなキャッチコピーで“癒し”を請け負ってくれるのか期待したい。