10月22日には、天皇陛下が国内外に即位を宣言する「即位礼正殿の儀」が行われます。こんな時、ファッション業界紙として気になるのはやはり皇族の皆さまのファッションのこと。英国王室などは、キャサリン妃やメーガン妃がパーティーや外遊でどこのブランドのドレスを着用したかがタブロイド紙で取り上げられ、それが経済効果にもつながっていますが、日本ではそういったことはあまり話題になりません。皇室御用達ブランドであっても、ブランド側はそれを発信することを控えるケースが多く、皇族の皆さまも、上質で控えめな、一見しただけではどこのブランドとは分からない商品を選ばれる傾向が強いからです。
そんな中にあって、「WWDジャパン」が7月に全国約50の百貨店を対象に2019年春夏の商況アンケートを実施したところ、松坂屋名古屋店の特選売り場からこんな興味深い声が届きました。「改元にあたり、新皇后雅子妃にゆかりのある『コンテス(COMTESSE)』のハンドバッグ“プリンセス”の期間限定催事を行ったところ、ブレイクした」というのです。一体「コンテス」ってどんなブランド?雅子さまゆかりのバッグってどんなデザイン?気になったので、「コンテス」に問い合わせてみました。
「コンテス」の広報担当者によると、1993年6月15日、当時皇太子であった天皇陛下と雅子さまのご成婚の際に、「宮中饗宴の儀」に向かう雅子さまが同ブランドのワンハンドルのハンドバッグを持っていらしたそう。それを記念し、同ブランドはそのバッグを“プリンセス”と名付けたといいます。松坂屋名古屋店で売れていたバッグはまさにこれのことですね。
この“プリンセス”バッグ、サイズの違いなどで価格は微妙に異なりますが、約40万円ほど。ロゴなどが一切入っていない、控えめなエレガンスはまさに皇室のイメージです。注目はその素材で、馬の尾の毛を使った織り地“ホースヘア”が同ブランドのアイコンだといいます。「約200年前の織機を使い、当時と同じ手法で“ホースヘア”を織っているため、生地は1日に1メートルほどしか織ることができない。尾の毛をカットできるのは馬の生涯で5~8回のみのため、希少性も非常に高い」のだそう。また、尾の毛は生きている馬から採取できるものなので、アニマルフレンドリーでもあります。“ホースヘア”素材で70~100個のパーツを作り、それを工房で職人が1つ1つ、手作業で組み立ててハンドバッグにしているそうですよ。
「コンテス」は1929年にドイツ・フランクフルト近郊で設立。近年はスイス発の、こちらもロゴなどが主張しない上質エレガンスを代表するブランド「アクリス(AKRIS)」と同じグループになっています。これもブランド側が大きくうたっているわけでは決してないですが「アクリス」もまた、皇族の皆さまのご愛用ブランドとして知る人ぞ知る存在です。
2019年は「コンテス」にとって設立90周年の節目の年。また、令和改元とも重なったことから、祝賀ムードを込めた記念商品として、パールやクリスタルビジューを“ホースヘア”に刺しゅうした“プリンセス”バッグ(57万4000円)も今春から販売しているそうです。