米大手ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」がプラスサイズモデルを起用して大きな話題になっているが、多くの下着ブランドが何年も前からダイバーシティーへの取り組みを行っている。
ダイバーシティーの流れをけん引してきた下着ブランドを紹介する。
1. AERIE
アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)の姉妹ブランド「エアリー(AERIE)」は、“リアルな女性像”を打ち出してファンを獲得したパイオニア的ブランドの一つだ。2014年にはSNS上で「#AerieReal」キャンペーンを実施。同ブランドの水着や下着などの商品を身につけた無加工の写真をハッシュタグとともに投稿することを促した。また、広告でもデジタル加工を施していない写真を使用している。
同ブランドを代表するロールモデルに、イギリス人モデルのイスクラ・ローレンス(Iskra Lawrence)、体操選手のアリー・レイズマン(Aly Raisman)、女優のヤラ・シャヒディ(Yara Shahidi)、レイチェル・プラッテン(Rachel Platten)の4人を起用。加えて、女優のビジー・フィリップス(Busy Philipps)、義足のスノーボード選手のブレナ・ハッカビー(Brenna Huckaby)らを起用し、さらに幅を広げている。
ジェニファー・フォイル(Jennifer Foyle)=グローバルブランド部門プレジデントは、「『#AerieReal』のプラットフォームは、私たちのリアルな女性たちにスポットライトを当てたいという取り組みのもとに誕生した。この情熱が他のブランドも巻き込み、人々のリアルな姿を写すことやセルフラブのムーブメントを支持する勢いを生み出した」と語った。
同ブランドの2〜4月期の既存店売上高は前年同期比16%増。それに加えて、5〜7月期も同27%増と継続して伸びている。アメリカンイーグル アウトフィッターズのロバート・マドアー(Robert Madore)最高財務責任者兼副社長は6月、来年または18カ月以内に10億ドル(約1085億円)の売り上げ規模に達する可能性があると予測した。さらに他の小売業者の閉店が続くなか、同ブランドは来年に60〜70の新規店舗オープンを予定している。
2. SOMA INTIMATES / TELLTALE
チコズ FAS(CHICO’S FAS INC.)の「ソーマ インティメイツ(Soma Intimates以下、ソーマ)」は、プラスサイズモデルやさまざまな年代のモデルの起用を続けている。同社が今年4月に立ち上げたミレニアル世代に向けたD2Cブランドの「テルテール(TELLTALE)」も同様の方針をとっている。
多様性の潮流が追い風となり、チコズ FASの株価が前年比56%減であるのに対し、「ソーマ」の第2四半期における既存店売上高は10.9%増加した。
3. WACOAL
ワコール アメリカ(WACOAL AMERICA)は1985年以来、サイズAAからIまでのブラジャーを販売している。ボブ・ヴィターレ(Bob Vitale)最高経営責任者(CEO)は「必ずしも変化に目を向ける必要はない。重要なことは、インクルージョン(包摂・包括性)と誰が顧客であるのかを受け入れることだ。私たちはあらゆるタイプの体形、サイズの女性に最適で快適な製品を提供することに着実に取り組んできた」とコメントした。
同社はこの7月、ダイバーシティーを打ち出すスタートアップブランドの「ライブリー(LIVELY)」を買収した。
4. SAVAGE X FENTY
歌手リアーナ(Rihanna)によるランジェリーブランド「サベージ×フェンティ(SAVAGE X FENTY)」は、9月に開催されたニューヨーク・ファッション・ウイークでさまざまな体格やサイズのモデルを起用したショーを行い称賛を浴びた。ショーでは、トランスジェンダーモデルのラバーン・コックス(Laverne Cox)や義足を着けたモデルらが登場した。
リアーナは「キャスティングはブランドが何を支持しているかを表現するためにとても重要なことよ。私たちが支持しているのはインクルーシビティー。私たちはどんな体形の女性もサイズを理由に疎外感を覚える必要はないことを伝えるために、たくさんのサイズを展開しているわ。全ての女性に自身をセクシーだと感じてほしい」と語っている。
5. PLAYFUL PROMISES
下着と水着を展開するイギリス発の「プレイフルプロミス(PLAYFUL PROMISES)」は、多様性が注目される以前からプラスサイズモデルやトランスジェンダーモデルを起用している。
同ブランドのキャンペーンでは、プラスサイズモデルのハンター・マクグラディ(Hunter McGrady)やガビ・フレッシュ(Gabi Fresh)らが登場するほか、6月の15周年記念コレクションではトランスジェンダー女優でモデルのレイナ・ブルーム(Leyna Bloom)が登場した。
エマ・パーカー(Emma Parker)創立者兼CEOは「いつの日か、トランスジェンダーであるかどうかすら語られなくなる日がくると良い」と語る。
6. THIRDLOVE
「ヴィクトリアズ・シークレット」へのアンチテーゼを掲げる「サードラブ(THIRDLOVE)」は、年配の女性や傷跡のあるモデルなど多様なモデルを起用する。
公式サイトではプラスサイズ用のカテゴリーを設けず、サイズにかかわらず全てのブラジャーを同じ値段で提供している。
7. KNIX
トロントを拠点とする「ニックス(KNIX)」は2013年にインクルージョンを掲げたオンラインブランドとして誕生した。これまでに、生理用ショーツや水着、最近ではマタニティーコレクションを発表して幅広いサイズを展開している。
8. VIVA VOLUPTUOUS
イギリス発のオンラインブランド「ビバ・ボラプチャス(VIVA VOLUPTUOUS)」は、プラスサイズの女性たちに向けた商品を提供している。「プラスサイズのほとんどのアイテムはベージュで可愛いデザインのものが少なかった。私たちはプラスサイズモデルにもセクシーでかわいく、美しいアイテムを提供したいと思った」とリズ・ウィルズ(Liz Wills)社長。ブラバンドのサイズは40まで、カップのサイズはNまでを展開する。
9. TOMBOYX
シアトルを拠点とするスタートアップ企業の「トムボーイX(TOMBOYX)」は、2012年にフラン・ダナウェイ(Fran Dunaway)とその妻のナオミ・ゴンザレス(Naomi Gonzalez)が設立。小売業の経験がない2人だったが、それまでなかったジェンダーニュートラルなアイテムを打ち出し人気を博した。同ブランドは、エクストラスモールから4Xまでのサイズを全て同じ価格で提供している。
ダナウェイは「私たちは全ての体形のためのブランドだ。異なる体形を持つ人がウェブサイトを訪れた時に、サイズのせいで多く払わなければいけなかったり、特別なセクションに移動しなければならないことは一種の侮辱だと思っている」。
同ブランドはサイズだけでなく、民族においても多様なモデルを起用している。
10. ADORE ME
ニューヨーク発の「アドア・ミー(ADORE ME)」は2012年にオンラインで誕生。スモールサイズからプラスサイズまでを扱う。ロマン・ロワ(Romain Loit)最高執行責任者は「私たちはさまざまな形の美しさを売っていく必要がある。私たちが他と違うところは、全ての人の美しさが平等であることに加えて、自信の源泉となるようなアイデアを伝えていることだ」とコメントしている。