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短期で結果が欲しい女性たちへ、進化する「時短ケア」最前線

 社会で活躍する多忙な女性が増え、「時短」という言葉は今やすっかり定着している。勤務形態に加え、効率良く家事を行う家電製品や、美容のお手入れに対しても「時短」というワードが頻繁に使われている。

 「30~40代の女性にインタビューすると、必ずといって良いほどあがるのは“自分の時間がない”という言葉です」とは、吉安可那子・花王ソフィーナ事業部商品担当。30代の場合は乳幼児や学童期児童の子育てに追われ、40代に入ると子供の受験や親の介護問題が生じてくる。「年代ごとに忙しさの理由は変わりますが、独身・既婚にかかわらず“働きながら、家族やパートナーとの関係も、自分自身の趣味や人生も大切にしたい”と願う女性が増えています」。

 これだけ聞くと少々欲張りにも思えるが、男性に比べて女性のライフステージは複雑に分岐していく。仕事、妻、母と1人でいくつもの役割を担いながら「全てをきちんとこなしたい」と願うとしたら、そこには日本女性の生真面目さが現れているようにも思う。そんな多忙な生活を反映して、実は過去10年で女性の「美容行動」が変化しているのだ。

 「花王の調査によると、2008年において、スキンケアの中で最も使用率が高いのは化粧水の90.2%、続く2位が乳液で58.8%。スキンケアの基本は、化粧水と乳液によるお手入れでした。ところが18年になると、化粧水の使用率は82.3%、乳液は43.6%に低下し、美容液が44%と、直近では乳液の使用率を越えています。新たなアイテムとしてパックの使用率が15.8%から21.6%へ伸長しました」(吉安商品担当)。

 この10年で「時短ケア」がブームとなり、洗顔後1品でスキンケアが完了する「オールインワン」や、化粧水代わりに毎日使える「大容量パック」が続々登場してきた。これらの時短アイテムは「1品で何役も兼ねる多機能性」が特徴でその分、誕生当初は、複数のステップを重ねるお手入れより、使い心地が少々物足りない面が否めなかった(そして当時はどこか手抜きなイメージも……)。しかし19年現在、時短ケアは新たなステージへと進化している。「現代の女性たちは情報感度が高く、口コミなどを参考にして、新しいものを取り入れることに抵抗がありません。最も重視するのは“パフォーマンス”です」と、吉安商品担当は語る。

花王が目指したのは「3日で肌に結果を出す」

 花王(KAO)から11月9日に登場する「ソフィーナiP」は、美容液2品によって肌へのパフォーマンスを追求する、究極のシンプルケアだ。目指したのは、「3日で肌に結果を出すこと」。肌の生まれ変わりには通常約1カ月を要するが、時間に追われる女性たちは、そんなには待っていられない。肌質が改善する“理想の期間”を聞いたところ、「3日から1週間以内」という回答が最も多かったそう。そこで「ソフィーナiP」では、洗顔後の肌に高濃度の炭酸泡を用いた「ベースケア セラム(土台美容液)」を使用。泡状のテクスチャーが化粧水のようにみずみずしい感触に変化し、瞬時に浸透していく。潤いの力で肌をやわらげ、巡りを促したところで、使用するのは「インターリンクセラム」。花王の得意とするセラミドを補給し水分保持能を高めると同時に、肌表面に“疑似的な角層”を形成するという。血流、潤い、シールド膜に注目した、肌のポテンシャルを効率良く高める処方だ。

 「形状はユニークですが、奇をてらったわけではありません。“短期間で結果を実感するにはどうしたらいいか”を突き詰めた結果、誕生した形状です。なぜ美容液2品なのかというのも、化粧水とも乳液とも違い、機能性を考え合わせた結果“美容液”という表現にたどり着きました」(吉安商品担当)。

リアルな視点から誕生した「サボリーノ」は販売4億枚超え

 花王が緻密なマーケティングを元に時短ケアを追求する一方で、「自分たちが欲しいもの」というリアルな視点から生まれたのが、BCLカンパニー(BCL COMPANY)の「サボリーノ」シリーズだ。「もともと『サボリーノ』シリーズは、13年に社長直轄のプロジェクトとして発足した“女子開発ラボ”から生まれた製品です」とはBCLカンパニー宣伝本部の御殿谷りえPR担当。「メンバーは企画、販促、PRなど部門を越えた20代後半~30代の女性のみ。世代も同じ働く女性たちが、日常的に感じていることを話し合いました」という。

 例えば「これから人と会うのに朝は顔がむくむ」「そういえば、朝用のマスクは市場に存在していないのでは?」という風に、1つ1つは些細なことでも、素朴な疑問を積み重ねた結果、女性のリアルな視点で欲しいものを製品化できたという。15年発売の「朝用マスク サボリーノ 目ざまシート」は、忙しい朝に、1品で洗顔・スキンケア・下地までをかなえる多機能マスク。現在に至るまで、累計4億枚越えの販売実績を誇るヒット製品となった。

 「プロジェクト発足から5年が経過。メンバーもそれぞれ年齢を重ね、結婚や出産を経験しました。ライフステージが変化し、エイジングサインが気になる世代となって、今回は“忙しい大人の肌に必要なものとは何か?”を突き詰めていったんです」と、御殿谷PR担当。たどりついたコンセプトは“夜60秒でかなうエイジングケア”。ここでもこだわったのは“肌へのパフォーマンス”だ。

 「この秋登場した『サボリーノ オトナプラス 夜用チャージフルマスク』は、リポソーム化したビタミンCとビタミンE を配合しています。バラエティーの価格帯では珍しい処方ですが、“きちんと肌に成分を届け、結果を出したい”という思いを込めています。マスクというアイテムにこだわったのは、家事をしながらでもお手入れができること。そして化粧水や乳液のようにキャップを開け閉めしたり、使用量を間違うこともなく、貼るだけで適切なお手入れができるからです」(御殿谷PR担当)と自信を見せる。

 ムダを徹底的に省いて効率を重視、そして何より結果を実感できること。花王にもBCLカンパニーにも共通するのは、時短だけではないすぐれたパフォーマンスだ。これまでスキンケアは、肌と向き合いゆっくりていねいに行うことが推奨されてきたけれど(もちろん今も基本的には変わらないけれど)、社会で活躍する女性にとって「そうもいっていられない」ライフステージが存在するのも事実。そしてそんな働く女性たちは、日常的に効率を追求し結果を出すことに慣れており、「結果が出るなら既存の方法にはこだわらず、フレキシブルにアイテムを試す」傾向もありそうだ。新たなステージに進化した時短ケア、今後忙しい女性たちにどのような評価を得るのか興味深い。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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