※この記事は2019年6月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
ピッティで聞いた「日本、負けてる! 」という話
「日本、負けてる!」。
海外コレクションの取材に赴くと、度々そう感じます。「負けてる!」と思う相手は、中国そして韓国です。
最初にそう感じたのは、もう10年以上前のこと。市場が拡大し、結果大勢にランウエイショーのチケットが届き始め、存在感は増すばかりの中国・韓国勢のスタイルを見て、「プレスもバイヤーもなんて華やかで、オシャレを楽しんでいるんだろう。それに比べ、日本は……」と思った時でした。中国・韓国勢は色とりどり、そして若い。比して“チーム日本”は今だってダークトーンで、若手はまだまだ少ない。下記リンクのロンドンスナップでも、日本人の登場回数はアジア勢よりはるかに少ないのです。そう感じた時、「せめて一矢報いたい」と勝手にライバル心をメラメラと燃やし、結果、今のスタイルにたどり着きました(笑)。
ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)のメインゲストを務めた「ジバンシィ(GIVENCHY)」のショー会場でも、「日本、負けてる!」と思ったエピソードを聞きました。ラフォーレ原宿のセレクトショップ、グレイト(GR8)の久保光博代表から、「ここ数日、ロンドンブランドの売り上げが急伸している。『クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)』なんて先週までは全然だったのに、今はバカ売れ。アジアからのインバウンドの売り上げが凄まじい」という話を聞いたのです。
数日前まで、ロンドンではメンズ・コレクションが開かれていました。さまざまなブランドの最新コレクションは世界各国のメディアが取り上げていますし、イベントも多彩でした。グレイトを訪れるアジアの顧客は、それらをしっかりチェック。例えばロンドンメンズの主催団体らが開催したコンテストでグランプリを受賞した「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」の売り上げは、“大フィーバー”中なんだそうです。
もちろんそんな消費者はごく一部でしょうが、私たちの国は、ここまで熱量のあるファンを育成できているでしょうか?むしろファンを減らしてないでしょうか?「悔しい」。久保代表の話を聞いてそう思い、「5年後には、グレイトと『WWDジャパン』で、エンドユーザーをドライブするプライズを開催しましょう!」と半分ヤケクソで夢を語り、握手した次第です。
ピッティでは「日本のお客様は、新しいスタイルを想像するのが苦手なので……」なんて話を聞く機会が増えています。幸い欧米人の多くは未だ、「日本はファッション先進国」と信じてくれていますが、このままではヤバい。私たちの国はここ数年で、ファッション・フォワードな国から“転落”し、コンサバティブな国になってしまったとさえ思います。このままで良いのか?一矢報いることはできないのか?そのために、自分は何ができるのか?私はメディアを通して知的好奇心を喚起するコンテンツを提供しつつ、草の根レベルでは派手な服装で「よくわかんないけど、ファッションって楽しそうだね」と思ってもらうことが自分の役割だと(勝手に)信じ、その信念に従い、(賛否両論なのは知っていますが)突き進んでいます。
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