合成ダイヤモンドに特化した「シンカ(SHINCA)」の店舗が10月、東京・銀座にオープンした。同ブランドは、京都の老舗ジュエラーである今与が手掛けている。地上1階約56平方メートルの店舗では、合成ダイヤモンドを使用したリングやピアス、ネックレスなどを販売。価格は2万円台からと手頃だ。同ブランドを立ち上げて約1年。日本における合成ダイヤモンドの現状について今与の今西信隆・社長に話を聞いた。
合成ダイヤモンドとは人工的に製造されるが天然ダイヤモンドと同じ科学組成、結晶構造、物理的特性を持つ。そのため熟練した宝石商や鑑定士でも目視だけで区別できず、特別の機械が必要。見た目は天然と全く同じ。合成ダイヤモンドの主要な製造法はCVD(CHEMICAL VAPORDEPOSITION)と呼ばれる化学気相蒸着法とHPHT(HIGH PRESSURE AND HIGH TEMPERATURE)と呼ばれる高温高圧法の2種類ある。
WWD:合成ダイヤモンドのブランドをいち早く立ち上げたきっかけは?
今西信隆・今与社長(以下、今西):私自身、一般社団法人日本ジュエリー協会の常任理事をしていることもあり、2015年ごろに合成ダイヤモンドが天然ダイヤモンドに混入してジュエリーに使用されているという問題が出たときからその対応策を考えてきた。実際、合成ダイヤモンドを見た際に天然と比べてそん色ないと思った。テクノロジーの進化は止められないし、合成ダイヤモンドとどう向き合うべきか考えた。世の中の流れを見て、やるべきだと考えて天然と区別する意味で新ブランドとしてスタートさせた。
WWD:「シンカ」を立ち上げた目的は?
今西:今与は1861年に創業し、当初はかんざしや帯留めなどの装飾品を販売していた。戦後からジュエラーになったわけだが、本物を提供することで人の心を豊かにしたいという思いを創業当時から大切にしている。だから、ダイヤモンドに手が届かない層に合成ダイヤモンドを提供することでダイヤモンド市場の裾野を広げたいと思った。天然と合成を共存させるのが目的だ。
WWD:鑑定書を付けて販売する理由は?
今西:デビアス(DEBEERS)の合成ダイヤモンドブランドである「ライトボックス・ジュエリー(LIGHT BOX JEWELRY以下、ライトボックス)」はミレニアル世代をターゲットにしたアクセサリーブランドだが、われわれは合成ダイヤモンドの市場においてトップラインを提供したいので鑑定書を付けている。カラーはI以上、クラリティーはSI2(スライトリー・インクルーデッド)以上、カットはエクセレントのものに18金やプラチナを組み合わせたジュエリーだ。
WWD:販売する合成ダイヤモンドのカラット数は?また価格設定はどのようにしているか?
今西:0.2~1カラットが中心。ブランドとして価格における信頼性はとても重要なので、価格設定は正直、悩ましい。ブランドを立ち上げた1年前は天然ダイヤモンドの上代の50%の値付けだったが、1年間客観的に価格を見てきて銀座店オープンを機に3分1に設定した。
WWD:ターゲット層と中心価格帯は?
今西:ターゲットは幅広い。シンプルなデザインなので、シンプル志向の消費者から支持されている。ダイヤモンドには手が届かないミレニアル世代から、ずっと1カラットが欲しかったという年配の消費者、また、本物を持っている富裕層からも関心が寄せられる。中心価格帯は4万5000~9万円程度だ。