経営破綻した米バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK以下、バーニーズ)に、新たな買い手候補が現れたようだ。情報筋によれば、ニューヨークのセレクトショップ「キス(KITH)」への投資で知られるサム・ベン・アブラハム(Sam Ben-Avraham)がおよそ2億6000万ドル(約280億円)での入札を提示したという。
バーニーズの買収に関しては、10月18日に米ブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)が2億7140万ドル(約293億円)での入札を提示し、バーニーズもそれに合意していた。入札は24日に行われる予定だったため、22日までにそれを上回る金額での入札がなければABGへの売却が成立していたと見られるが、入札期限が24時間延長され、それに伴って入札日も28日に変更された。今後、ベン・アブラハムによる提示案についてバーニーズと債権団が検討し、入札条件を満たしていると確認された場合には入札への参加が可能となる。
買収案が複数ある場合、最終的な選択は破産裁判所の判断に委ねられるが、総合的に見て内容が優れていると評価されたケースでは買収額が低い案が選ばれることもあるという。
ABGの買収案は高額ではあるが、同社は主にバーニーズのオンラインビジネスと知的財産権に関心があると見られている。買収後はカナダの小売り大手ハドソンズ・ベイ(HUDSONS BAY)とライセンス契約を結び、その傘下であるサックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)の店舗にバーニーズのインショップを構えたい考えだ。バーニーズのニューヨークとロサンゼルス旗艦店は残すとしているが、在庫資産などは売却する意向だと言われており、店舗の存続は不透明だ。また、ABGの買収案にはバーニーズ側から買収契約を撤回した際の違約金として810万ドル(約8億7000万円)が設定されている。
一方で、ベン・アブラハムの買収案は提示額こそABGに劣るものの、ニューヨークとロサンゼルス旗艦店を含む5店舗とニュージャージー州にある物流施設を残すとしている。しかし、同氏はこれに関する具体策を述べていない上に、“バーニーズ救済”を訴える公開書簡をファッション業界の経営陣に送付して買収資金の援助を求めるなど、企業の買収取引ではあまり一般的ではない行動を取っており、「まるで素人だ」と評する関係者もいるという。
本件に関する審問は、10月31日にニューヨークの破産裁判所で行われる予定。