ファッション

ステラ・マッカートニー × 二階堂ふみ ディープなサステイナビリティー対談

 ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)は10月16日、阪急うめだ本店で女優の二階堂ふみを迎えてサステイナビリティーをテーマにトークイベントを行った。司会を務めたのはタレントのハリー杉山。3人のセッションのハイライトを紹介する。

「”変化を起こす“ことを考えていた両親のもと、農場の近くで育った」

ハリー杉山(以下、杉山):「ステラ マッカートニー」ブランドをはじめるきっかけは?また、サステイナビリティーとの関係性は?

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):“何かを変える、変化を起こす”ことを考えていた両親のもと、オーガニックファームのそばで育ちました。私はベジタリアンで、自然、動物、季節などを非常に敏感に感じながら過ごしました。7~8歳のころにはファッション業界で働くことを決めていましたが、そうは言っても、ファッション産業は革や毛皮を使うことが通例。自分のポリシーに反するものでした。そんな中でも自分のポリシーを持ち、最も自然環境に害を与えてしまうと言われているファッション産業にいながら、素材に注意を払い、環境に配慮したモノ作りを実践しています。

二階堂ふみ(以下、二階堂):ステラさんの作る毛皮やレザーを使用していないものを持つことや、身に着けることが心から気持ち良く、快適に感じています。いったいどのようなモチベーションで、ステラ・マッカートニーというご自身の名前で発信し続けているのですか?

「ノーと言われたらイエスの方法を見つけていく」

ステラ:私は何事においても他に追従していくことが好きではないんです。ノーと言われたら、とにかくイエスの方法を見つけていく。常にチャレンジの姿勢で今まで仕事をしてきました。ファッション業界は同じやり方で今まで来たけれど、今、業界そのものにチャレンジが必要だと思います。

チャレンジには、もちろんクリエイティブな意味もありますが、私はビジネスウーマンであり、4人の子どもの母親でもある。だから、よりよい倫理観を持ち、新しい方法でモノ作りに取り組まなきゃいけないと思っています。

今、サステイナビリティーは、とてもトレンディーな会話になっているけれど、そこで終わらせてしまうのではなくずっと続けなければいけないこと。だから、サステイナビリティーは、セクシーでクール、ファッショナブルに表現されるべきで、これが当たり前になっていくことがとても重要だと思います。

「自分の生活とどれだけ密接なのかをもっと知らなきゃいけない」

杉山:サステイナビリティーがトレンディーになっているとありましたが、二階堂さんは実感はありますか?

二階堂:きっと今、徐々にサステイナブルな行動をとろうとしているところで、気付いている方がたくさんいるからこそ、こうやって皆さんとお会いできたと思います。(サステイナビリティーが)自分の生活とどれだけ密接なのかを、われわれはもっと知らなきゃいけない。海外に行くと、商品の裏に「動物実験をしていません」とか「環境に配慮しています」というマークがあるものが多いんですが、日本では意識が高い方しか日常的に目に触れる機会はないのかなとも思います。そういうところから少しオープンマインドになり、世代を超えてちゃんと話し合いができる環境になればと感じています。

杉山:プロセスは始まっているけど、何をしたらいいのかという明確なアイデアが生まれてこないですよね。

二階堂:そうですね。だから、ステラさんにはまず何ができるのかもお聞きしたいですね。

ステラ:みんな「ステラ」で買い物して(笑)。

今、多くの方が昔に比べて、自分の人生についてたくさん考える時代になっている。例えば「何を食べるべきか」「エクササイズをしなければいけない」「どこへ旅行しようか」といったことをもしかしたら皆さんのほうがファッション業界の人よりもいろいろなことを考えているのかもしれない。そんな時代だから、私たちは消費者にたくさんの情報を発信していかなければいけないと思っているし、もっといろんなことが見えるようにしなければいけない。政府の政策も変わっていかなければいけないと思います。

ファッション製品において大事なのは原材料。どこで調達しているか、どこからその原料が来ているのか、などをよく考えなければいけない。私たちが調達している60%は環境にプラスになるものですが、常にそうしたモノ作りを心掛けています。

例えば、ファッションでよく用いられるビスコースは、1年におよそ1億5000万本の木を倒してしまっている。私はサステイナブルな方法でこのビスコースを作っていますが、それをしているのが私だけ。クリエイティブにチャレンジをしながら、オープンマインドで、自分が例となって主導していきたいと思っています。

消費者は知りたいという気持ちを持たなければいけない。これをやらなければいけないというプレッシャーではなくて、興味を持つことで変化が生まれると思います。例えば、お肉の量を少し減らすことでもずいぶんプラスのインパクトがあります。ファストファッションは大きなマイナスのインパクトがあるということを心に留めながら、毎日いろんな問い掛けをしていただくことが必要です。また、服の不十分な活用とリサイクル欠如により、年間5000億ドル(約54兆円)が喪失することを考えることも大切よね。

「アクションを起こす重要な瞬間にいる」

二階堂:私は今、保護猫や保護犬の活動を始めようと情報を集めています。また、そういう子を家族に迎え入れて少しずつ勉強しています。世代や宗教などとさまざまな考えがある人々がこの地球上に生きている中で、どうやったら人間と人間、人間と動物とがうまく共存しながら持続可能な暮らしをしていけるのか考えるようになりました。

ステラ:まさに今、私たちはその現実に直面していると思います。現在の地球は私たちが両親から受け取ったもので、その両親はさらにその前の世代から受け取っています。誰も意図的に破壊しようと思ったわけじゃなくて、生活をよりよくしようとここまで来たわけなんです。

今、若い人たちが、自分たちの将来や自分たちの子どもの将来を考えて、声を大にして何かアクションを起こさなければいけない非常に重要な瞬間に来ていると感じます。今までは、親(大人)が子どもに教えてきた時代だったけれど、理解していない世代に向けて、子どもが声を上げて親に教えていかなければいけなくなっている。

だからこそ、上がっている声に耳を傾けてほしいし、その発言に対して敬意を持って聞いてほしい。それがうまくいけば、違う世代が一つになり素晴らしいものを一緒に生み出すことができると思うから。

「楽しくセクシーに表現すること。それが唯一の変化を起こせる方法」

杉山:僕が個人的にどうしても聞きたかったのは動物福祉についてです。きっかけは?

ステラ:本当に単純です。私は子どもの頃からたくさんの動物がいる農場でたくさんの時間を過ごしたので、その自分の周りにいる動物と同じ動物の肉を食べることができなかった。生きている動物は友だちという感覚が自然にありましたから。だから、革や毛皮を使わないのも自然に生まれた考えなんです。革や毛皮を使うのは、必ずしも誇らしいことではないと思います。武器に対しても同じように感じます。

今、さまざまな技術が生まれたことにより、肉の代用となる食べ物も作れるようになったり、毛皮や革の代替品も作れるようになった。それは急成長している産業にもなっています。

おやおや――通訳の方の訳し方で深刻に聞こえてしまっているのかしら。皆さん、ちょっとだんだんこの辺に(眉間を指さして)シワが……(会場が和む)。

今あるものに代わるものを作り出して提案したい。それを本当に楽しくセクシーで、ファッショナブルで、ラグジュアリーに。それが唯一の変化を起こせる方法だと思っています。

二階堂:すてきなものをどんどん広めさせたいというステラさんのマインドを、「ステラ」のお洋服を着ることで、影響を受け続けていると感じます。私は写真を撮るのが好きで、さっき、ステラさんのお母さまのリンダ・マッカートニー(Linda McCartney)さんの写真展も拝見したんですけれども、被写体がすごく生き生きとしてて、心から楽しんでいる姿と、すごくナチュラルな家族の姿が見ることができました。こういうところからステラさんはいろんなものを感じて、「ステラ マッカートニー」というブランドがあるんだなと感じました。

ステラ:何年にもわたって彼女が撮り続けてきたポラロイドをもとに本を作りました。とてもパーソナルなものです。私もこの本を初めて目にしたとき、感情的にとてもぐっときました。私は、両親が非常に有名だったこともあり、いろんな所から離れて、とても保護された環境で育ちました。もしかしたら、本を見るとそういうことが伝わるかもしれません。

作品を見ていただくと、私の母が本当に素晴らしい才能を持った写真家だったことを分かっていただけると思います。全部ポラロイドで撮ったものですが、とても質は高いものです。

今は手軽に写真が撮れてしまうけれど、ポラロイドで撮ったこの彼女の写真とつながるところがあると思います。また、写真から温かみや動物への愛情、家族に対する愛情を感じていただけるのではないかと思います。

二階堂:本当に贅沢な時間でした。ステラさんに伝えたいのは、ステラさんに共感して、学びたいと思っていて、サステイナビリティーを探求して広めたいと思っている方々が私も含めてたくさんいるということです。またぜひ日本に来ていただけたらうれしいです。

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