ファッション

新生渋谷パルコに次世代型ショールーム これからのクリエイターに求められるものとは?

 デジタルハリウッド大学大学院のファッションテックラボ(Fashion Tech Lab)が、オープンラボ「渋谷PARCOのAIショールーム『BOOSTER STUDIO』とファッションテック、新しいクリエイターと新しい売り方」を開催した。

 イベントには、ファッションテックラボ主宰でファッションテックデザイナーのOlga(オルガ)デジタルハリウッド大学大学院助教授兼ish(イッシュ)代表と佐藤貞行パルコ コラボレーションビジネス企画室ソーシャルイノベーション事業部部長が登壇。11月22日に開業する渋谷パルコの1階にパルコとキャンプファイヤーが共同で出店する「ブースタースタジオ バイ キャンプファイヤー(BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE以下、ブースタースタジオ)」の紹介とあわせて、これからのクリエイターに求められるものと新しい売り場のあり方について語った。

 イベント冒頭ではOlga助教授がファッションテックの実践とファッションテックラボの活動を紹介。ファッションテックラボを「鬼のように最先端に頭から突っ込むラボ」と話し、衣服とテクノロジーが接続するあらゆる領域を横断しながら産学協働で実践していくと語った。

 続けて、佐藤部長が「ブースタースタジオ」の詳細を解説した。「ブースタースタジオ」は、パルコとキャンプファイヤーが共同で手掛けるクラウドファンディングプラットフォーム「ブースター(BOOSTER)」と連携したPoC(概念実証)ショールーム。より早い段階からの製品の市場調査を目的としていて、企画開発段階のプロトタイプや製品化以前のアイデアのテストマーケティングのサポートを目指す。

 店内に設置したカメラやセンサーを使って店舗を訪れた人の行動データをAI解析し、デジタル上で行われているトラッキング(行動記録・分析)をフィジカルな空間で再現。計測したデータは出品者にフィードバックされるため、製品化や展示内容の調整などに活用できるという。また、渋谷パルコというあらゆる業種が入る施設の1階に出店することで、幅広い客層との接点を生むきっかけをつくれると「ブースタースタジオ」の強みを語った。

 佐藤部長は、「パルコのスピリットは、小さな営みをお互い汗をかいて大きくしていくこと」だという。クリエイターの活動支援に消費行為を通じて充足感を覚える人が肌感覚的に増えていると話し、「ブースタースタジオ」などの施策を通してあらゆる人と協同でクリエイティビティーを発揮できる場をつくり、クリエイターを応援していきたいと語った。

 Olga助教授はパルコの挑戦的な姿勢を評価しつつ、「パルコがこれだけの場を用意してくれているのに、中のプレーヤーがスキル的に追いつけずにスベり倒したものを出したらサムい。他の専門学校では自分の学生時代と同じ内容の講義をやっているので、このままだとファッションはまじで終わるなと思う。自分のスペシャリティーを考えて、やろうとしていることの中に何か新しいことがあるかどうかを意識する必要がある。『難しそう』や『実現できるの?』と言われるくらいがちょうどいい」と語り、現状のファッション教育を批判しながら、講義に参加した学生たちにハッパをかけた。

 佐藤部長は、テクノロジーの発展によるマイクロビジネスの潮流に触れながら、売り場のあり方について「トレンドやマスのマーケットよりもクリエイターの信条がこもったモノ作りを応援し、それをてらいなく発信することを大切にしていきたい」と話した。

 これからのクリエイターやデザイナーに求められることについてOlga助教授は「自分の“ファッションテックデザイナー”という肩書きも仮称みたいなものなので変わるかもしれない。自分も新しいクリエイター像を知りたいので、精神論みたいなことを言っちゃうけれども、『これだ!』というものをめちゃくちゃ追いかけるしかない。それがどんなジャンルであれ振り切って走り切るみたいな。それを実現させるためのスキルを鬼のように習得することが必要。上から言われたようなことだけやっていると結構スベる。私も授業などで話してしまうけれど、それに対してもっとかみついてきてほしい」と、再度学生に向けてメッセージを送り、会を締めくくった。

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

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