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投資家がくれた薪をくべ火を高く熱く起こしたい ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュースP.8-9「有名個人投資家たちに聞く 僕らがファッションの市場に見出す投資価値」

読み解きポイント:「じゃあ、パリコレを目指すアパレルベンチャーって面白くない?」

ニュースのポイント

 可能性のある新しいビジネスに資金を投じるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどは、インターネットを中心とするスタートアップ企業や若手起業家などと繋がりが深く、アパレルビジネスやファッションブランドとは縁がないと思うかもしれない。しかし、最近ではD2Cやカスタマイズ事業を展開するブランドなどに投資する事例が増えている。ファッションに投資する4人の有名エンジェル投資家に、理由や投資の際の決め手、現状のアパレルビジネスの課題点などを聞いた。

Azuはこう読む!

 単位は極力苦労せず効率良く取り、空いた時間でフリーペーパーを作るサークル活動とひと粒280円の高級マカロンを売るバイトに没頭、稼いだお金の全ては旅行と服に投じていた不真面目な学生時代。“投資家”と聞くと「起業だの何だの騒ぐ意識高い同級生がよく言ってる人たちだ。夢と若さを食い物にしてるんだ!」と、口をへの字にして大人には謎の警戒心をむき出しにしていました。起業系キラキラ学生とは異なる世界で生きていた文化構想系学生にとっては、危ない人にしか見えなかったのです(笑)。

 今となっては当時の私を引っ張り出して往復ビンタをしてやりたい。「夢を笑い可能性を潰すのは、お前のような自己完結型の人間だぞ」と。会社が生まれ、成長し、世の中にイノベーションを起こそうとしている渦のど真ん中にいる今、投資家という存在無しにビジネスが興らないことは、笑えないくらい身に染みて知っています。

 私がセレクトショップからベンチャー企業に飛び込んだのは、創業から3カ月の時。社員は共同創業者の2人しかおらず、他に学生エンジニアインターンや営業インターンがいたくらいでした。私も最初は無給のインターンです。読んだことも書いたこともない(笑)プレスリリースの執筆やユーザーイベントの企画、オウンドメディアの編集などからスタート。早朝のピッチコンテストに参加したり、寒空の下でアプリのダウンロードを促すホッカイロを配ったり、できることは何でもやりました。

 最初2人だった社員はポツポツと増え、とうとうシェアオフィスでは足らなくなり(共有スペースを使いすぎて怒られ、フリーの飴もめちゃくちゃ食べていました)単独オフィスを構えたのが創業から約1年後。その時は念願の庭付き戸建てを手に入れた時くらい感慨深かったです。買ったの、私じゃないけど。サービスを取り上げていただいた記事を読んで「賞賛するなら金をくれ!」と叫びたくなるときだってありましたが(失礼)、今は何とか30人超えの会社に成長しています。ただの平OLなのでファイナンスに関してはさっぱりですし、株は「どうぶつの森」のソレしかわからないのですが、我々が描く未来を面白がってくれた投資家やベンチャーキャピタルがいるからこそ、今があるのはまぎれも無い事実。私たちがすべきことは調達した薪をくべ、できる限り高く熱く火をおこし、闇夜の中で人々を導く光となり、新しい夜明けを迎えることなのです。ただし炎上だけは回避で。

 キャッシュレス還元の数%にしがみつく平OLには想像もつかない額が動く投資の世界ですが、倍返しを狙うマネーゲームをしているわけではなく、そこには「未来」への希望が込められています。だから紙面にもあるように「パリコレみたいなファッションの世界のど真ん中のコンテクストを重視する人」は、ビジネスモデル的に新しいことをしているわけではないので、投資の対象ではなかったりします。

 hey佐藤氏の「ユーザーが求めていても、トラディショナルな業界からは評価されないところを、適切に評価していきたい」という言葉、「アパレル一本で生きてきた人たちにどう響くのかな?」と思う一言でした。投資家たちがこぞって投資する(こぞりすぎだよ〜とちょっと妬む時もある)D2Cやサブスクリプション、カスタマイズ、美容系口コミ、インフルエンサーを活用したブランドビジネスなどは「アパレル的にどうなの?」というビジネスモデルやクリエーションのクオリティかもしれませんが、消費者が求めていれば、それは広げるべき未来なんです。そこにビジネスチャンスがあるし、大きなお金をリスクを背負って動かす意味がある。

 と、ここまで未来未来と言ってきていきなり逆張りするんですが、「投資家が投資したいと思わない〈パリコレみたいなファッションの世界のど真ん中のコンテクストを重視する人〉が、投資家をその気にさせてしまうアパレルビジネス」を見てみたくなりました。超絶クラシカルなヒエラルキーの頂点に君臨する「パリコレ」に新たなビジネスモデルで目指すアパレルベンチャーって、面白くないですか?

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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