1999年にアディダス(ADIDAS)と日本サッカー協会がサプライヤー契約を締結して以降、11月6日に発表された迷彩柄が目を引く新ユニホームを含めこれまでに全12作のユニホームが発表されてきた。サッカー日本代表のユニホームは約2年に1度のペースで刷新されるごとに賛否両論を巻き起こしてきたが、果たして過去モデルのデザインはどうだったのか。全11作をそれぞれのコンセプトとともに振り返る。
― 1999〜2000 ―
コンセプト:機能美
1 / 1
「アシックス(ASICS)」と「プーマ(PUMA)」とのサプライヤー契約の持ち回りを廃止し、「アディダス」と現在に至るまでの独占複数年契約が始まった初代ユニホーム。青色で“日本の国土とスピード感”、白色で“信頼とフェアプレー精神”を表現し、“風”のモデル名で愛された。このユニホームを着用していた当時のイレブンは、今なお“アジア最強チーム”との評価が高い。
― 2001 ―
コンセプト:フューチャー プログレス
1 / 1
選手の動きが大胆に見えるようにと、首元から肩にかけて配された白のポイントと青色のボディーの対比から“コントラスト”モデルと呼ばれ、翌年に控えた自国開催のW杯を前に1年間限定で着用されたモデル。大きめの襟にクラシック感があり、このユニホームを最後に襟付きユニホームが発表されていないことからファンの間には根強い人気がある。
― 2002〜2003 ―
コンセプト:富士山
1 / 1
前作と比べてかなりシンプルなデザインとなったこのモデルは“日本の美”を表現したというもので、自国開催のW杯で着用された記念すべき一着。左右の首元からそれぞれの袖口にかけて走る赤色のパイピングは、湖面に映る逆さ富士になぞらえたもの。高温多湿の日本の気候を考慮して裏地にメッシュ素材を使用した二重構造で、エンブレムをプリントするなど徹底的な軽量化も図られた。
― 2004〜2005 ―
コンセプト:ブループライド
1 / 1
“経験と挑戦”を表現した濃淡の青色のグラデーションが、「アディダス」の“スリーストライプス”を想起させる。首回りには、日の丸をイメージしたという赤色がアクセントカラーとして採用された。ドイツW杯出場を世界最速で決めた試合で着用されていた。
― 2006〜2007 ―
コンセプト:刃文
1 / 1
ドイツW杯を戦う日本代表のキャッチフレーズに“SAMURAI BLUE”が選ばれたこともあり、日本刀の刃文(刀身に見られる波模様)をモチーフに、これまでのユニホームのイメージから一新。両脇に何重にも重なる流線型のラインがあしらわれた、歴代ユニホームの中でも特異なデザインに仕上がった。いまだに2次流通市場で取引されている。
― 2008〜2009 ―
コンセプト:日本魂
1 / 1
これまでのどのモデルよりも明るい青色のボディーに、黄色を随所に用いた珍しい配色で話題となった一着。前身頃の裾から胸元にかけて“飛躍”をイメージした放射状の黄色のラインがのびており、これが日の出を想起させることから“ご来光”モデルと呼ばれた。
― 2010〜2011 ―
コンセプト:革命に導く羽
1 / 2
南アフリカW杯に向け、快適さを重視した従来型の“フォーモーション”と、運動能力を向上させるコンプレッションウエアとしての機能を持つ“テックフィット”という2タイプを、環境やコンディションに応じて選手自身が選ぶことができた“革命的”なモデル。前身頃にあしらわれた日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている八咫烏(やたがらす)の羽のグラフィックが高い評価を受けたが、ファンの間で首元の大胆な赤色が「よだれかけ」「レッドカード」などと批判の的にもなった。しかし、男子はW杯で歴代最高成績タイとなるベスト16入りし、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)はW杯を制したという歴史に残るモデルだ。
― 2012〜2013 ―
コンセプト:結束の一本線
1 / 1
前年に発生した東日本大震災の復興をめざして一丸となる日本の姿に重ね、1本の線で日本人の結束を表現した。コンセプト通り、前身頃には1本の赤色のラインが走っているが、それを見た一部のファンから「むしろ分断されている」との声が上がった。また、肩部が異なる青色の切り替えになっていたりと、その斬新なデザインから前作に引き続き物議を醸したモデルに。
― 2014〜2015 ―
コンセプト:円陣
1 / 1
ブラジルW杯に照準を合わせて製作されたモデルで、鮮やかな青色のボディーの背中に毛筆タッチでネオンピンクの一本線が横向きに描かれ、円陣を組んだイレブンを上から見ると大きな輪になるようにデザインされている。また、試合開始前の円陣後にピッチへと広がる選手から着想した、左胸のエンプレムを中心に広がる11本のラインも特徴的。当時の“「アディダス」史上最軽量のサッカーユニホーム”としても知られる。このユニホームは現在でも試合会場で頻繁に見かける人気モデルだ。
― 2016〜2017 ―
コンセプト:イレブンブルー
1 / 1
鮮やかな前作から一転、ほぼ黒色ともいえる日本代表ユニホーム史上最も濃い青色を採用した。胸元の11本のボーダーから成るグラデーションで、“個性の異なる11人”を表現。その中央に走る12本目の赤色のラインは、12人目の選手とされるサポーターを表した。また、1999年から継続して配されていた肩のスリーストライプを初めて脇にあしらい、襟裏には八咫烏の羽のグラフィックをプリントするなど、真新しいデザインとなった。
― 2017〜2018 ―
コンセプト:勝色
1 / 1
昨年のロシアW杯で着用されていたことからも記憶に新しいモデル。かつて武将が戦いに赴く際に身につけた鎧下と呼ばれる着物に使われる藍染めの生地の中で、最も深く濃い藍色とされていた“勝色”をコンセプトに採用。2018年がW杯初出場から20年という節目の年だったこともあり、20年分の思いを糸で紡ぐというイメージから前身頃の全面に刺し子柄を施した。さらに首元の内側には、過去に出場した5大会のW杯ユニホームの特徴的なデザインを組み合わせたロゴがあしらわれ、言葉そのままに歴史や経験を背負う意味が込められた。
以上全11ユニホームを振り返ってみると、発表当時は受け入れにくかったモデルでも、いざ着用して戦うイレブンを見て気が変わったという人も多いだろう。ユニホームは単なる試合用ウエアである以上に、選手の闘争心や団結力を高めるなど精神機能性の役割も担っている。今回のユニホームで選手たちが好成績を残し、あわよくば東京オリンピックで金メダルを獲得することを一人のファンとして願う。