大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDファッション」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
今日のニュース:P.6「ノードストロムのNY攻略法」
読み解きポイント:忙しいニューヨーカーの時間をどれだけ確保できるのか?
ニュースのポイント
米百貨店のノードストロムが、メンズ館に続き10月24日、ウィメンズ館をマンハッタン旗艦店としてオープンした。他百貨店との差別化の手段は、ラインナップではなく、利便性の高い顧客サービス。米国はホリデーシーズンに販売された商品のうち、10兆円分相当が返品される返品大国。即日配達、店舗受け取りに加え、ECで購入した商品は、面倒な書類記入なしで、店内のどのレジからも返却できる。9月にオープンした小型サービス店舗「ノードストロム ローカル」は裾上げ、スタイリストとのワードローブ相談、リサイクル衣料の回収なども行なっている。
CKRはこう読む!
「顧客接点の数と深さ」。企業価値を評価する上で、今後ますます重要な指標になるのではないでしょうか。
本号「ファッションEC戦国時代 勝ち抜くのはどこだ?」という特集の中では、EC売上高、EC流通額、EC化率によって各社の状況が比較されています。これらの指標は、ビジネス上、重要であることは間違いありません。OMO(Online Merges with Offline)が叫ばれる中、ECだけを切り口に企業価値を評価するのはどうなのかな?と思うところありますが、ECにフォーカスした場合、サイトの滞在時間やアクセス回数を評価指標にすることも忘れてはなりません。人が平等にもつ、1日24時間という制約の中、どれだけ心を奪うことができたかということの重要性は、どんなに強調してもしすぎることはありません。例えば、ZOZOから送られてきた割引クーポンをきっかけに、通勤電車の中でアプリを立ち上げ、好きなブランドアイテムを眺めながら、想像を膨らませているうちに30分が過ぎてしまったというシーン。ファッションには人の心を惹きつけ、時間を消費してしまう、メディアコンテンツとしての力もあります。
本題ノードストロムのサービスは、「顧客接点を多く作る」という視点で設計されていることを強く感じます。EC化率(売上高ベース)は30%に達しており、「忙しいニューヨーカーのみなさま!欲しいものは、隙間時間にネットで選んでください」と半ば割り切り、「失敗しない、安心できる」ことをリアル店舗のサービスで補完しているようにも見えます。
またベビーカーのクリーニングや地域住民ミーティングスペースなど、ちょっと立ち寄ってみようかなと思える仕掛けが用意され、顧客の滞在時間をうまく確保しようとしている取り組みも見逃せません。顧客がリアル店舗の中で過ごす行動履歴を分析し、サービスにフィードバック、改善していくことも視野に入れているでしょう。
一人ひとりの顧客を理解し、EC、リアル店舗問わず、体験価値をあげていく。それがノードストロムのNY攻略法なのかもしれません。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中