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連載 サステナビリティって何?専門家が答えます。

サステナビリティって何? 専門家が答えます。 連載Vol.3 「2050年の需要に応えるには地球2.3個分の資源が必要」H&Mが推進する循環型戦略

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのかわからないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞いてその解決策を探る。今回はH&Mヘネス・アンド・マウリッツで100%循環型戦略をけん引するセシリア・ストロンブラド・ブランステン(Cecilia Brannsten)=環境サステナビリティ・マネジャー兼サーキュラーエコノミー・リードに聞く。

「唯一の解決策は循環型ビジネスの確立」

WWD:H&Mがサステナビリティに取り組んだきっかけは?

セシリア・ストロンブラド・ブランステン=H&Mヘネス・アンド・マウリッツ環境サステナビリティ・マネジャー兼サーキュラーエコノミー・リード(以下、ブランステン):私たちのビジネスコンセプトは“ファッションとクオリティーを最良の価格で提供する”です。これまで私たちが果たしてきた役割はファッションを民主化することで、今日、その役割はファッションを持続可能にすることに広がっています。なぜならそれはファッションを楽しみ続けるための唯一の方法だからです。

このまま人口増加が進めば、世界で販売される衣料品の量は2050年までに3倍になり、この需要に対応するためには地球2.3個分の資源が必要といわれています。

私たちは、唯一の解決策は産業全体が直線型から循環型へとビジネスモデルを転換させることだと考えます。循環型モデルでは資源が最大限に活用され、それが新たな製品や素材に生まれ変わるため、廃棄物やマイナスの影響の削減へとつながるからです。

私たちのビジョンは企業のサイズと規模を有効に利用し、テクノロジーとイノベーションの助けを借り、ファッション産業を公正平等でありながら循環型でクライメット・ポジティブ(気候に対してプラスの影響を創出する)へと導くこと。その責任があると考えています。

WWD:循環型のアプローチで必要になるのは?

ブランステン:高品質で耐久性があって安全な素材の選択と、再利用とリサイクルの可能性を確保した製品デザインでしょう。それをバリューチェーン全体へと適用します。私たちは衣料品の手入れと修繕、再利用とリサイクルを通して製品寿命を最大化するさまざまな方法を模索したいと考えています。

また、100%再生可能エネルギーによる自社運営に向けて今取り組んでおり、40年までにクライメット・ポジティブなバリューチェーンを完成させることを目指しています。

WWD;循環型実現のための課題は?

ブランステン:リサイクル技術の欠如、回収されたリサイクル可能な素材の限定的な利用、トレーサビリティーなどがあります。課題解決にはテクノロジーとイノベーションが必須で、そのために投資と支援をしています。

WWD:具体的に投資している企業は?

ブランステン:ワーン アゲイン(WORN AGAIN)やリニューセル(RE:NEWCELL)、H&Mファンデーション主催の「グローバル チェンジ アワード(Global Change Award)」を受賞したモラル ファイバー(MORAL FIBER)に投資をしています。また、アンバーサイクル(AMBERCYCLE)とインフィニテッドファイバーズ(INFINITED FIBERS)は最近取り組みを始めました。いずれもリサイクル繊維に取り組むイノベーション企業です。どれもまだ実用化できるほどになっていませんが、技術が完成すれば、素材において大きな変化を起こせると自信を持っています。また、持続可能な森林原料の調達を行うツリー トゥ テキスタイル(TREETOTEXTILE)やアルゴリズムを利用したパーソナライゼーションに取り組むスレッド(THREAD)、リセールのプラットフォームのセルピィ(SELLPY)などにも投資しています。

「重要なのはデータ解析とAIで過剰生産を回避すること」

WWD:サステナビリティと頻繁に投入されるたくさんの商品――矛盾をはらんでいるが、この早いファッションサイクルに関してサステナビリティの観点からどのように考えるか?ファッションシステムの功罪をどう考えるか?

ブランステン:生産と消費者の需要をどのように管理するかを再考し、また最新テクノロジーと革新的なビジネスモデルを利用するチャンスが私たちにはあります。“循環性(サーキュラリティー)”とは究極的には資源を持続可能な方法で利用することであり、その中心となるのは過剰生産しないこと。データ解析技術とAIの手助けにより、需要と供給の足並みをより正確に合わせることができます。これによりエネルギー、輸送、そして資源を節約することができます。

WWD:あなたが考える理想的でサステナブルなファッション産業とは?

(アンナ・ゲッダ(Anna Gedda)=サステナビリティ統括責任者との共同回答)

ブランステン&ゲッダ:真の循環型の確立。つまり、素材や資源がゴミにならず、またお客さまが自分の衣服を愛して手入れをし、そして衣服も長く利用されて、さらに再利用やリサイクルを介し新たな繊維へと生まれ変われるようにデザインされていること。全ての衣料品がリサイクルもしくはサステナブルな素材で、再生可能エネルギーによって生産されていること。

私たちのビジネスにかかわる全ての人が公正平等な取り扱いを受けられるに値すると考えています。H&Mにおける100%公正平等とは、自社内と私たちのサプライチェーン全体で価値観を共有して人権を尊重することです。公正な雇用を提供して多様性を支援し、なおかつそれらを受容しながらビジネスを成長させることによって、私たちは公正で平等な社会に向けて貢献できると考えています。

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