サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回はサステナブルファッション研究の第一人者であるケイト・フレッチャー(Kate Fletcher)=ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション サステナブルファッションセンター教授に聞く。
WWD:サステナブルファッションを定義すると?
ケイト・フレッチャー(以下、フレッチャー):生態学的な環境保護を基本にしたファッションのこと。地球なしではファッション業界も存在しないことを認識し、生物物理学上の限界や地球の可能性を念頭に置きながらファッションのあるべき姿や表現を考えること。
WWD:ファッション産業の問題点と解決策は?
フレッチャー:第一の問題は、業界が“業績拡大の論理”に基づいていること。現在のシステムは、コミュニティーや土壌、労働者の健康ではなく、業績を伸ばすことに最適化されている。この単一の論理に基づいたシステムを、ほかに優先すべきことや注目すべき点などを加えたものに置き換える必要がある。それでも産業や資本主義は残るけれど、そればかりが優先されることはなくなるだろう。
WWD:サステナビリティに関してどのような企業を評価するか。
フレッチャー:地球を元に戻すための手段として事業を考えている企業を評価する。自然を身近なものにし、人々のつながりを深くして、私たちをより人間的にしてくれるから。
WWD:学生たちは何に関心を持っているか。
フレッチャー:英国の学生たちは、エクスティンクション・レベリオン活動(Extinction Rebellion:気候変動に抗議する非暴力行動)にとても関心を持っている。彼らは気候変動や生物多様性が失われることについて情熱を持って学んでいる。自分たちの未来を危惧しているから。
WWD:デザイナーの役割がプロダクトをデザインするだけではなくなっているが、今、デザイナーに求められることは?
フレッチャー:産業として新製品を作るだけでは不十分。デザイナーはもっと新しいことができるはず。例えば、人間以外の生き物を含めた他者との共生を目指して行動するとか。そうした方法を学ぶことは、デザイナーにとってもはや不可欠になっている。
WWD:今後、ファッション業界はどうなると思うか?
フレッチャー:より少ないモノで、より多くの喜びを得られるようになるといい。