ファッション

男心をくすぐる謎多き「アフィックス」 中心人物ステファンとタロウに設立経緯やアシックスとのコラボを聞く

 アシックス(ASICS)は10月、2006年に登場したランニングシューズ“ゲルキンセイ(GEL-KINSEI)”をベースに、どこかインダストリアルなムードが特徴のメンズブランド「アフィックス(AFFIX)」とコラボレーションしたモデルを発売した。

 「アフィックス」とはもともと、ロンドンの新鋭デザイナーのキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)や、「ギミーファイブ(GIMME FIVE)」設立者でUKストリートシーンの雄として知られるマイケル・コッペルマン(Michael Kopelman)、スタイリスト兼クリエイティブ・コンサルタントのステファン・マン(Stephen Mann)、“マッキントッシュ 0001(MACKINTOSH 0001)”でヘッド・デザイナーを務めるタロウ・レイ(Taro Ray)という強力な面々が2016年に結成したクリエイティブチームだ。「シュプリーム(SUPREME)」クルーのエーロン・ボンダロフ(Aaron Bondaroff)が主宰するインターネットラジオ「ノー ウェーブ(Know Wave)」内の一つの番組としてスタートし、18年にブランドを設立。アパレルから小物まで、シンプルでありながらどこか男心をくすぐるアイテムが発売直後から話題となり、今年6月にはアシックスと初コラボを果たして、今回早くも2作目を送り出すこととなった。

 コラボスニーカーの発売に合わせて東京でローンチイベントを行うため、ステファンとタロウが来日。スニーカーについてはもちろん、アイコニックなロゴについてまで話を聞いた。

WWD:まずはブランドの設立経緯と、日本語を含む4つの言語から成るロゴについて教えていただけますか?

タロウ:「アフィックス」の中心人物4人がそれぞれ、個別ないしは一緒にプロジェクトをやっていて、もし全員で意見を交換できる場があれば素晴らしいものができるかもしれないと思ったのが始まり。全員が共通してユーティリティーウエア(作業服)のデザインやアイデアが好きだったから、それをどう生まれ変わらせて新世代に“ユーティリティー(活用性)”とは何かを表現できるかに興味があって、アパレルを始めたんだ。

4つの言語は、日本語、英語、ドイツ語、ブルガリア語を使っている。僕がイギリスと日本のハーフで、ステファンはイギリス人、マイケル・コッペルマンはドイツにルーツがあって、キコ・コスタディノフがブルガリア人だからさ。みんなブルガリア語をロシア語だと思って、「つづりが間違ってるよ」ってよく言ってくるから困ってるんだけどね(笑)。

WWD:ブランド名の由来は?

タロウ:“アフィックス”は言葉の前や後につける接辞で、例えば“ポストモダン”だと“ポスト”が接辞にあたるんだけど、それをつけることによって“モダン”から“ポストモダン”という別の意味になる。同じように“既存のアイデアに新たな解釈を与えたい”とか“新たな意味を加えたい”という意味を込めて決めたんだ。

WWD:ユーティリティーウエアから着想しているだけあり、もし“〇〇系”のようにカテゴライズするなら“インダストリアル系ブランド”が正しい?

ステファン:僕らは何系だって構わないよ。もしどうしてもカテゴライズしたいのであれば、受け手が好きに判断してくれたらいいと思っている。小売店でラグジュアリーからカジュアルまで取り扱っているように、以前と比べてブランドをカテゴライズすることにあまり意味がなくなってきているからね。それよりも今はカテゴライズされるジャンルではなく、作り出すアイテムやコンテンツがいかに本物だと感じられるかどうかの方が重要になってきているんじゃないかな。

WWD:それでは今回の「アシックス」とのコラボスニーカーについて教えてください。

タロウ:まず最初に、これまでの“ゲルキンセイ”にはない機能を加えることができたら面白いと思った。といっても、そもそもロードランニング用だから無駄な機能なんて必要なかったんだけど(笑)。でも僕らがやるからにはスタイリッシュで機能的なものにしたかったから、「ゴアテックス(GORE-TEX)」を用いて防水性を加えたんだ。

ステファン:ロードランニング用に防水性は必要ないと思われがちだけど、例えば東京の街中で走っていて雨が降ってきたときに防水だったらうれしいよね?防水性は最優先じゃないけど、日常的に履くことを考えるとあったらうれしい機能なんだ。今までなかった機能を付け足すという点は、まさに“アフィックス”なアイデア。どんなときでも毎日履ける、成熟したタウン用スニーカーになったんじゃないかな。

WWD:トレンドとしての機能性を意識したというよりも、日常使いを想定した結果、機能性に行き着いたということでしょうか?

タロウ:そうだね。ランニング用はランニングという特定の用途のために作られているけど、防水性を追加するだけでより幅広いシーンで多目的に使用できるという、汎用性の高さを考えた結果だね。

WWD:先ほどからロードランやトレランの話が出ていますが、お二人がスポーツをやっているからこそ今回のアイデアが生まれたというのはありますか?

タロウ:うーん、どうなんだろう。ステファンは毎朝走ってるよ。僕は違うけど(笑)。

WWD:ちなみに、このスニーカーでランニングは可能ですか?

ステファン:もちろんさ。“ゲルキンセイ”は発売当時、最高クラスにあったランニングシューズで、それをベースに再解釈するというのが今回の面白さの一つだったからね。

WWD:カラーリングがいかにも「アフィックス」らしいですね。

ステファン:「アフィックス」の今季のシーズンカラーの一部なんだけど、僕たちはいつも工場やその周りのものを着想源にしていて、今回のカラーは工場地帯にある看板の色合いをまねしているんだ。

タロウ:工場といっても現代的な工場で、普段は機械やパイプや作業服が着想源となることが多いね。

ステファン:5年ぐらい前にタロウにあげたジャケットが、ちょうどこのスニーカーと同じような色だったことを思い出したよ。僕らはずっとこんな色味が好きみたいだね(笑)。

WWD:日本で世界先行販売し、イベントまで行った理由は?

ステファン:アシックスは言うまでもなく日本のブランドだし、日本は今年ラグビーのワールドカップがあって、来年にはオリンピックが開催されるから、これまでよりもさらに世界的に注目されている。それにタロウは半分日本の血が流れているし、僕は旅行で何回も訪れてるし、僕たちと日本は何かと縁があるのさ。

タロウ:僕らは日本のブランドやファッションを見て育ったから、日本は僕たちのアイデンティティーの一部と言ってもいいくらいブランドの立ち上げ当初から関係が深い国なんだ。

ステファン:あとは、スニーカーに「ゴアテックス」を使用しているという特徴を説明するのに東京が最適な場所だと思ったのもあるね。東京と言えば誰しもが都会を想像すると思うんだけど、「都会で防水性なんているの?」という問いに「東京はたくさん雨が降るんだ」と説明したらわかってもらいやすいだろ?

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