シチズン時計は、世界最大の時計・宝飾見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」に出展を続ける。編集部からの問い合わせに、同社の広報担当者が答えた。「決定は夏頃だった」という。同見本市は、世界最大の時計企業であるスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)やセイコーウオッチが出展を取りやめ、継続に黄色信号が点滅している。
シチズン時計傘下の「シチズン(CITIZEN)」「ブローバ(BULOVA)」「フレデリック・コンスタント(FREDERIQUE CONSTANT)」「アルピナ(ALPINA)」、さらにムーブメントメーカーのミヨタ(MIYOTA)は従来通り「バーゼル・ワールド」に出展する。一方、同じく傘下でこれまで同見本市に出展していた複雑時計ブランドの「アーノルド&サン(ARNOLD & SON)」は、「バーゼル・ワールド」とライバル関係にある「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA、旧S.I.H.H.)」に出展する。広報担当者は「両見本市において各ブランドの魅力を発信し、グループ全体としてプレゼンスを示したい」と話す。
1986年から「バーゼル・ワールド」に出展を続けてきたセイコーウオッチとシチズン時計だが、事業戦略はまったく異なる。セイコーウオッチはかつてスイスの時計ブランドを傘下に収めていたが、現在はライセンス契約を除いて自社ブランドのみ。一方のシチズン時計は、2007年にアメリカがルーツの「ブローバ」を、12年には「アーノルド&サン」やトゥールビヨンなどの複雑ムーブメントを開発・製造するメーカー、ラ・ジュー・ペレ(LA JOUX PERRET)を傘下に持つプロサー・ホールディングス(PROTHOR HOLDING)を買収。16年にはスイスの「フレデリック・コンスタント」と「アルピナ」も買収した。シチズン時計はムーブメントの外販にも力を入れており、ミヨタは海外の製品パンフレットにわざわざ“ミヨタ製ムーブメントを搭載”と書かれるほど技術力に定評がある。
片や「バーゼル・ワールド」から撤退し、片や出展先を拡大――ムーブメントの外販を含めた売上高で世界トップ10に入る国内二大時計メーカーは、スイスを代表する2つの見本市への対応が鮮やかに分かれる形となった。残るカシオ計算機の動向も気になる。