ミラノのセレクトショップ、ディエチ コルソ コモ(10 CORSO COMO)創業者兼ディレクターのカルラ・ソッツァーニ(Carla Sozzani)が、ギャラリー「ソッツァーニ財団(Fondazione Sozzani)」をパリにオープンした。ソッツァーニは伊「ヴォーグ(VOGUE)」や「エル(ELLE)」などの編集者として活躍した後、ファッションやフード、音楽、アート、ライフスタイル、デザイングッズなどをまるで雑誌を編集するかのように集めたディエチ コルソ コモを1990年に創業した。同店にはギャラリー、ガレリア・カルラ・ソッツァーニ(Galleria Carla Sozzani)が隣接しており、ソッツァーニ自身が30年近くにわたってキュレーターとして多くの展覧会を開催してきた。さらに、長年の友人であった故アズディン・アライア(Azzedin Alaia)の遺志を継ぎ、彼の生涯のパートナーで画家のクリストフ・フォン・ウェイエ(Christophe von Weyhe)と共にアズディン・アライア財団(Fondation Azzedin Alaia)を昨年パリに創設し、「アズディン アライア」に関する展覧会を開いている。
新たに構えたソッツァーニ財団が位置するのは、アフリカとアラブ系移民が多いパリ北東の18区。ギャラリーは約1000平方メートルの広々としたスペースと高い天井を持つ建物で、19世紀には倉庫として利用されていた。ファッション・ウイーク中には「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」や「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」がショールームとして利用していたこともある。初の展覧会は、ソッツァーニのパートナーでありクリエイティブ面での右腕でもあるアーティストのクリス・ルース(Kris Ruhs)の作品を集めた「創造言語(Creation Language)」が10月15〜20日に開催された。ルースは1952年にニューヨークで生まれ、96年よりイタリアを拠点に絵画やコラージュ、陶器、彫刻を制作するビジュアルアーティストとして活動している。同展覧会では縦4メートル、横9メートルの大きなキャンバスに木や鉄の彫刻、紙クズなどを用いた複数の作品を披露した。写真で見ると完全な平面に見えるが、実際には3次元の立体的な構造である。本来は捨てられる廃棄物を収集してキャンバスの上で再構成し、「見る者の視覚によって特定の存在を超えたコミュニケーションツールとして創造すること」を意図したという。
「“ギブ”の精神を持ち続ける」
初日前夜に催されたオープニングには、ジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)やエマニュエル・アルト(Emmanuelle Alt)仏「ヴォーグ」編集長などと談笑するソッツァーニの姿があった。「30年近く前にミラノでギャラリーを開いてから、もう一つ別の形で新たに発信できる場をつくりたかった。私にとっては、文化的な旅を拡大するチャレンジでもある」と、ソッツァーニはパリに新たに同財団を構えた理由について語った。72歳にして新たにチャレンジする彼女の目は輝いている。今後はミラノとパリ両都市で写真や芸術品の展覧会を定期的に開くほか、本のプレゼンテーションや講演、文化イベントを開催する予定だという。「私にとってギャラリーでの展覧会は、作品を通して多くの人々や社会とコミュニケーションを取る一つの方法。コミュニケーションは“ギブ・アンド・テイク”というより“ギブ”の精神を根底に持ち続け、文化的なフィールドで何か貢献したい」とソッツァーニは優しい笑顔で話した。