ビジネス

食でわざわざ足を運ぶ「MUJI」を作る ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDファッション」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.4「無印良品」が百貨店の後継に名乗り

読み解きポイント:アマゾン、アリババグループの盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)の隙を突く、地域特性を生かした食品戦略

ニュースのポイント

 良品計画は、2021年8月期までに、売り場面積1650平方メートル級の大型店を国内100店に増やす目標を掲げている。出店については、大型ショッピングセンターだけでなく、閉店が相次ぐ地方・郊外の百貨店、GMS(総合スーパー)の跡地も有力候補だ。また、売上高構成比7.8%(2018年度実績)の食品を30年度までに30%へ高めることも表明。地域密着を徹底するため「コミュニティマネージャー」を配置することで、全国圴一の売り場を見直し、その地域ならではの店に育てる。

CKRはこう読む!

 「生鮮食品と地域特性を生かした店舗戦略」。シンプルで良質な世界観を持つ「無印良品」が世界に先駆けて進める、新たな小売戦略になるかもしれません。

 小売店舗における大きな課題の一つは、いかに来店、来客の数を増やすかです。1日24時間という制約がある中、顧客の心を掴み、「来店」というアクションを起こしてもらうには工夫が必要です。まずは多くの人が「毎日関心のあること」にフォーカスする必要があります。生鮮食品は毎日入れ替わるため、週に何回かの来店を促すきっかけになります。「毎日使うものを便利に。」というテーマを掲げる「無印良品」の他商品との親和性も高そうです。来店により、購入機会を増やし、ついで買いによる販売数量をあげることは、ここ数年、衣料、食器などを中心に値下げを進めてきた良品計画の戦略であり、来店促進につながる生鮮食品は、新たな起爆剤になりそうです。「食品のみ」「衣料品のみ」に固執せず、それぞれの商品特性を組み合わせて、「MUJI」という一つの世界観を軸に、商品横断で売上増、利益確保が狙えるところに無印良品の強さがあります。

 クリック一つで、商品がその日のうちに届く時代の今は、他社との差別化を図る必要もあります。EC大手であるアマゾン(AMAZON)が提供する「Amazonフレッシュ」は、配達エリアが限られ、置き配・宅配ボックス利用・再配達も行なわれていません。現在のところ生鮮食品は、アマゾンも深く攻め込ていない領域です。「無印良品」のように実店舗がある場合はスーパーのように、一定時間が経過した生鮮食品を惣菜に加工するなど柔軟な対応も可能です。EC専業にはない強みになります。

 地域特性を生かした店舗戦略は、他国でも成長戦略のカギになっています。ニューリテールの象徴である、中国の小売大手アリババグループ(ALIBABA)の「フーマー(HEMA)」。上海や深センなどの大都市中心に出店し、店内では生簀(いけす)で高級鮮魚を販売。店舗から3km以内なら30分以内に配達します。EC、リアル店舗の販売状況を分析し、ダイナミックに商品ラインナップや価格を最適化する仕組みがあるのも特長です。今まで統一フォーマットで出店拡大していた「フーマー」が今年に入り、地域の属性に沿った店舗に変える戦略へと舵を切り始めました。高齢者の多い地域と、若い会社員の多い地域では、ラインナップする商品やサービス内容を変える模様です。

 無印良品は、すでに地域ごとの状況に合わせた、店舗デザインと出店を進めています。18年3月には大阪府堺市に、地元漁港で水揚げされた鮮魚を並べるスーパーマーケット型の店舗を開設。今年4月には石川県のロードサイドに2000平方メートルの店舗を出店し、子ども服やマタニティウェアを充実させています。地域の企業や生産者と連携し、独自の世界観でセレクトした地元商材を取り扱う。標準品とは違う商品ラインナップでわざわざお店に足を運ぶ理由を作る「無印良品」は、世界の中でもオリジナリティに溢れた小売企業と言えるのではないでしょうか。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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