※この記事は2019年7月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
ダイバーシティーなモノブランド
「モンクレール(MONCLER)」は、(もちろん、いろんなアイテムがありますが)ダウンブランド。売り上げの大半をダウンが支えているのは間違いないし、ブランド自体もキーアイテムの売り上げが全体の半分を下回るなんてありえない、と思っているであろうくらいダウンアウターに注力しています。しかしながらこのブランドは、実にダイバーシティー(多様性)に富んでいて面白い。その象徴は、複数のクリエイターが参画するコラボプロジェクト「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」です。
2020年春夏のミラノメンズ期間中、「モンクレール ジーニアス」を構成するラインの1つ、「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」とのコラボコレクションのお披露目のパーティーに伺いました。ストリートでもあるダウンブランドの顧客には当初から若年層が少なくありませんが、パーティー会場のゲストの若いこと!!「パーム エンジェルス」が繋がるヒップホップ・カルチャーの住人も多く、黒人も大勢です。応対する「モンクレール」のスタッフは、普段と違うムードに明らかに戸惑っていました(笑)。
そんな「モンクレール」の売り上げは、国内・国外ともに今も好調です。正直小売店からは、「『モンクレール ジーニアス』の売り上げは、マチマチ」との声も聞こえますが、藤原ヒロシとのコラボラインを筆頭に既存とは異なる消費者を獲得しているのは事実。複数のラインを定期的に“ドロップ”したり関連イベントを開いたりしてるため、SNSでのビジビリティーはバツグン。若年層における知名度をさらに高めています。
そして注目すべきは、既存顧客や高感度層が、自分たちとは全く異なる新客の流入を歓迎していることです。ダイバーシティーなブランドのファンの“元祖”であること、新客の流入が絶えない“イケてる”ブランドを昔から知っていたこと、若者と同じブランドのファンというある種のコミュニティーに加わっていることに喜びや誇りさえ感じている。さまざまなSNSで「#moncler」と検索すると、時々、そんなコメントに出合えます。
女性の登用などを支援する企業のトップに「なぜ、ダイバーシティーなんですか?」と話を聞くと、「儲かるから。逆に、それをしなければ儲からず、ビジネスが続かないから」と断言されたことがあります。「モンクレール」のショップを訪れると、いつも彼の言葉を思い出すんです。モノブランドなのに、ダイバーシティー。不思議なブランドです。
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