デサント ジャパンは、事業拡大の一環としてランニングシューズ市場に本格参入することを発表した。同社は2012年にも一度参入していたが、他社との差別化を図れなかったことなどを理由に数年で撤退。その後、スポーツアパレルの研究開発拠点ディスク(DISC、DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)を設けたことで開発力が飛躍的に向上し、満を持して激戦のランシューズ市場への再挑戦となった。販売目標は24年までに国内で300万足。基幹ブランド「デサント(DESCENTE)」で100万足を掲げ、半数をランニングシューズが占める販売比率を目指す。
参入に際し、「スポーツブランドは、シューズがあって初めて真の総合スポーツメーカーといえる。他メーカーでも事業の大半がフットウエアであり、まずはスポーツ・トレーニングの原点であるランニングのためのシューズを開発した」(小川典利大デサント ジャパン代表取締役社長)と、「デサント」から新作ランニングシューズ“原点(GENTEN)”を発売する。開発に2年以上を費やしたという同シューズのコンセプトは、“新・薄底、新感覚の推進力〜日本人ランナーの足を作る〜”だ。「日本人が走るために必要な機能を持つシューズが意外と少ない」という観点から、日本人の足の形と走法を徹底的に研究。その結果、踵部と中足部のフィット感が高く、アウトソールがフラットで薄底の“原点”が生まれた。
“原点”では、ランナーのタイプ別に異なる型を用意する。アウトソールに世界最薄・最高強度素材「グラフェン」を使用し、ミッドソールにカーボンプレートを搭載したエリートランナー向けの“ゲンテン-EL”(1万7600円)、同じく「グラフェン」付きでグリップ力を高めたフルマラソン3時間前後のランナーに向けた“原点 RC”(1万5400円)、フィット感と安定性で快適なランニングを楽しみたいフルマラソンの完走を目指すランナー向けの“ゲンテン-ST”(1万3200円)の3モデル。それぞれ無駄な力を使わせずにブレの軽減も実現し、ラスト(足型)やアウトソールのパターン、デザインはモデルによって異なる。現在、特設サイトや一部店舗では予約を受け付けており、12月13日から直営店を中心に販売を開始する。
市場で厚底が主流となっている中で“あえて”薄底を開発した理由については、「今、速く走るには厚底しかないという考え方になっているが、ランナーにはいろいろな選択肢があるべきだ。開発の中で薄底を好む人が大勢いることが分かった。そういう人に(薄底の)新しいシューズを履いてもらい、よりランニングを楽しんで速く走ってもらいたかったから、“薄底”で勝負した」(大辻俊作デサント ジャパン第1部門フットウエア開発部部長)という。「『ランニングシューズはミッドソールだ』と言われることもあるが、原点に戻ることが『デサント』らしさであると考え、シンプルでミニマルな薄底になった。将来的にはディスクを活用していろいろなシューズを開発していくが、“原点”はその第1弾」(小川社長)。
発表会では、ファンランナー向けのシューズ“DR ムーブ(DR-MOVE)”(8900円)と、「デサント」初となるトライアスロンシューズ“デルタ トライ OP(DELTA TRI OP)”(1万8000円)も披露し、長距離の塩尻数也選手とのアドバイザー契約締結も発表された。