トルコ西部の都市イズミルにある紡績グループのウチャク(UCAK)は取扱量の約7割をオーガニックコットンが占める、トルコ最大のサプライヤーだ。1975年にフセイン・ウチャク(Huseyin Ucak)が創業し、95年には紡績をスタートさせた。紡績工場は往々にして縫製やニッティングなど川下に進出するが、ウチャクは川上に向かった。棉(めん)農場を自社運営し、トレーサビリティーを突き詰めるためだ。これに目を付けた繊維商社の豊島は、2019年3月にオーガニックコットン糸の独占契約を締結。これによりウチャクは日本市場に本格的に乗り出す。パートナーシップの詳細については、「WWDジャパン」11月25日号にまとめた。ここではフセインの孫であるオヌール・ウチャク(Onur Ucak)=ウチャク マネージングディレクターに、日本のサステナビリティについて聞いた。
※繊維業界では、農作物として取引を行う状態を“棉”、棉を加工して工業製品となったものを“綿”と呼ぶ
WWD:“トレーサビリティー”はウチャクのアイデンティティーだと聞いた。
オヌール・ウチャク=ウチャク マネージングディレクター(以下、オヌール):2002年頃、世界中が温暖化など地球環境を問題視し始めた。しかしファッション業界は反応できておらず、それはサステナビリティ先進エリアであるヨーロッパも同じだった。加えて、その頃のオーガニックコットンのメインプレーヤーはインドであり、今もそれは変わらない。われわれが棉農場の運営を始めたのは12年のことだ。そこが起点と言える。
WWD:19年3月には日本の繊維商社、豊島とオーガニックコットン糸の独占契約を結んだ。
オヌール:豊島とは15年に綿、17年に糸の取引をそれぞれスタートさせた。担当者が、0泊3日の強行軍も含めて年に3~4度イズミルに来てくれた。彼らとの会話を通じて豊島の歴史を学び、オーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ(ORGABITS)」の存在も知った。豊島は日本でオーガニックレストランを経営し、ウチャクはトルコでオーガニックホテルを運営している。共通点も多く、サステナビリティについての考え方も一致していることから独占契約締結に至った。豊島は、ウチャク製のオーガニックコットン糸を“トレーサブル・オーガニックコットン糸”として売り出す。
WWD:豊島としても天然繊維の独占契約は初とのこと。中長期的なプランは?
オヌール:まずはウチャクのオーガニックコットン生産量を3年以内に1.5倍にする。そのうえで豊島との糸の取引量も3年で2倍、6年で4倍にしたい。
WWD:日本のモノ作りも遅まきながらサステナビリティを意識するようになった。何を期待する?
オヌール:日本は最も成熟した国の一つだ。同時に地震や津波、台風などの自然災害も多い。これらにも地球温暖化の影響があると思うが、それにもかかわらず日本にはオーガニックなものを選択する積極性は感じられない。本来であれば、日本人ほどその理解が深い国民はいないはずだ。もっと関心を持ってほしい。
WWD:確かに自然災害はわれわれにとって“当たり前のこと”になってしまっているのかもしれない。それではサステナビリティとデザインの融合はありえるか?
オヌール:各企業、各ブランドがいっそうサステナビリティのプロモーションを行うべきだ。企業としては利益を上げることも重要だが、あくまで環境ファーストであるべきで、サステナビリティは金もうけの手段ではない。10~20代の若い世代は50~60代に比べて環境負荷への責任を感じている。だから彼らに人気のファストファッションや大手SPAは、率先してサステナビリティに取り組んでほしい。
WWD:ウチャクが行うサステイナブルな取り組みについて教えてほしい。
オヌール:13年に第1工場にソーラーパネルを取り入れ、電力の10~15%をまかなっている。20年には第2工場にも導入する。言わずもがなだが、目標は100%の達成だ。豊島との独占契約はもちろん、ヨーロッパのビッグブランドからもオーガニックコットンの問い合わせは増えている。これに応えるために第3工場を建設予定だ。