今年9月に10周年を迎えた「THREE」が、11年のスタートに大きく動き出している。2013年にオープンした「THREE」のフラッグシップショップ「THREE AOYAMA(THREE青山)」を刷新し、内容を一新してよりパーソナルを重視した施設へと生まれ変わった。国内の百貨店をはじめとした店舗には11月から新コンセプトのカウンターを順次導入する。海外に目を向けると10月にアジア最大の市場である中国本土での販売が始まった。
「THREE」の2018年12月期の売上高は、5年前の13年に比べると500%を超える増加。翌年14年に当時社長だった石橋寧会長は「10周年には売上高100億円を見据えている」と語っており、実際の売上高は100億円規模になっているようだ。ブランド飛躍の“立役者の一人”であるのが、13年にオープンした旗艦店「THREE 青山」だ。当時、カフェを併設するビューティブランドは珍しく、さらにはショップのオープン時間といえば、表参道界隈では11時、12時スタートが一般的である中、朝の8時台からオープンし、“朝活”を推進。先駆けでもあった同店舗は、じわじわとファッション関係者を中心に話題となり、カフェは朝からミーティングなどでも活用されるようになるなど、表参道の人気スポットとして注目を集めた。
その旗艦店が10周年を機にリニューアルした。そのリニューアルでは時代を反映し、パーソナルな提案を特徴とした。新コンセプトは“PERSPECTIVE FOR ACTION(多角的な視野)”で、訪れる人が五感を通じていつもとは異なった視点から物事を見つめることができるような、パーソナルな体験ができる場を提供。空間デザインとコンテンツを一新した。これまで植物を使用したナチュラルなイメージから、石を基調としたデザインに変更。コミュニケーションテーブルを中央に配置し、定期的にセミナーなどを行う予定だ。さらに、よりパーソナルなカウンセリングをかなえるコンテンツとしてホリスティックケア、メイクアップそれぞれのスペシャリストをそろえるプログラムを展開する。
1階カフェ・レストランは、平日の朝から日中にかけてはカフェラテとのペアリングに最適な料理やビーガンやグルテンフリーなどにも対応したメニューを用意する「リバイブキッチン」、ディナータイムは新たに「レストランRK」として季節の食材を用いた野菜中心のコースメニューを提供する。2階の「リズム スパ」は、03年のオープンから確実に顧客を獲得しリピート率も高い。今回、“感性を楽しむ場所”として初めて利用する人に向けたエントリーメニューをはじめ年4回の季節限定メニューなどを提案する。
国内の店舗の新コンセプトのカウンターは、その旗艦店との連動感を持たせる。アクロの御後章社長は、「新カウンターは、旗艦店のように石と水平を生かした存在感のあるものになる。大阪高島屋を皮切りに伊勢丹新宿本店、名古屋高島屋と順次切り替えていく」と語り、進化した「THREE」の世界観が広がるだろう。
海外戦略は、13年のタイへの進出をスタートに、台湾、インドネシア、マレーシア、香港、韓国、シンガポールへと広げ、10月からアジア市場最大の中国本土に上陸し、現在68店舗まで拡大する。中国では、9月25日にオープンしたばかりの北京大興国際空港に免税店を出店。北京大興国際空港は、既存の北京首都国際空港と合わせ、旅客数を25年までに約1億5000万人と5割増やす予定で、18年の都市別の空港旅客数で計算すると、ニューヨーク、東京を抜いて世界2位に浮上する規模となる。その地への進出は、「日本発グローバルブランド」を目指す「THREE」にとって、大きな一歩になるだろう。
御後章・社長は「現在、国内売り上げは前年を下回っているが、海外では中国人客を中心に拡大している。中国人はタイの各店舗や韓国の免税店などさまざまなエリアで購入する傾向にあり、そういった広範囲での購買に対応できるよう世界中に店舗を広げていきたい」とコメント。グローバルブランドを目指す上で、将来的には欧米に広げていくことは容易に想像でき、10周年は一つの通過点に過ぎず、11年目にアクセルを踏む「THREE」に注目したい。