大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDファッション」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
今日のニュース:P.5「スノーピークが本気の海外進出へ」
読み解きポイント:「自らもユーザーとなり、誰よりも自分が欲しいもの」を作り続ける強さ
ニュースのポイント
スノーピーク(SNOW PEAK)が2020年4月、米国ポートランドに大型店を開く。19年10月にもロンドンに直営店を構え、現在19%の海外売上高比率を、21年までに23%へ伸ばすことを計画。「物販に加え、飲食、宿泊ができる体験型店舗をグローバルで増やしていきたい」と山井副社長は意気込む。現在、売上高の83%はアウトドア製品である中、アパレルは12%。アパレル事業は数字以上に「アウトドア経験のない若年層」という顧客獲得に貢献しており、海外事業においても、幅広い客層にアプローチするカギとしての期待が高い。
CKRはこう読む!
「人生に野遊びを。」。新潟県三条市の山間、約5万坪のキャンプフィールドに本社、直営店、生産工場を構える姿勢は、「野遊び」というコーポレートスローガンそのものを体現しているように感じます。またスノーピークは社会的使命として「人間性の回復」を掲げています。「文明進化によるストレス増大」を社会的課題と捉え、「自然と人、人と人とのつながり」により、その解決を目指していることがトップのメッセージから伝わってきます。
15年に78億5000円だった売上高は、18年に120億7000万円へと大きく拡大しました。矢野経済研究所の調べによると、16年4422億円だった国内アウトドア市場は、18年に5230億円へと拡大。スノーピークの主軸であるアウトドア事業は、市場拡大の波にうまく乗ってきたことがわかります。
記事にもある通り、「東京デザインスタジオとのアパレル協業」「隈研吾氏との木製モバイルハウス共同制作」など、異業種とのコラボレーションも積極的です。17年には、地方自治体向けのコンサルティング会社も立ち上げ、施設集客への支援にも乗り出しました。自社製品やアウトドア事業領域だけにこだわらず、ビジョンに共感する周囲の力を借りて、社会的使命を果たそうとするところに、スノーピークの強さを感じます。
創業者の山井幸雄氏は、登山や釣り道具に不満を持ち、自分が欲しいものを作り出し、社長の山井太氏は、欲しいキャンプ道具を作り、オートキャンプ市場を牽引しました。現在、副社長の山井梨沙氏は、欲しいアパレルを作り、アウトドアを超えた市場開拓を行っています。「誰よりも自分が欲しいものを作る」「開発から営業まで自ら行い、数字にも責任を持つ」。言葉で書くと簡単ですが、企画開発、生産、販売すべてのノウハウを身につけるには、それなりの時間を要します。人こそが財産と考え、時間をかけててでも、人財育成を行い、ユーザー視点に基づくサービス開発を続けるスノーピークの製品には、オリジナリティが宿るのかもしれません。
自分が欲しくて作り出したものだからこそ、セールストークも弾みます。逆に、耳を塞ぎたくなるような、顧客からの不満も「自分ごと」として真摯に受け止めることもできるでしょう。
国内と需要が異なる海外市場での成功は、容易ではありません。国内のヒット商品をそのまま販売しても、上手くいかないことも多々あります。しかし、海外でも同じように、自らが現地市場でユーザーとなり、誰よりも欲しくなるものを作り、ビジョンに共感する仲間の力を借りることができれば、製品やサービスに、スノーピークらしい世界観が宿り、顧客の心を掴むことができるのではないでしょうか。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中