米ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」は、名物イベントである豪華なファッションショーを今年は開催しないことを発表した。
同ブランドを擁するLブランズ(L BRANDS)のスチュアート・ビー・バーグドーファー(Stuart B. Burgdoerfer)最高財務責任者(CFO)兼エグゼクティブ・バイス・プレジデントは、「ファッションショーはブランドを構築する上で非常に大きな役割を果たしてきたし、『ヴィクトリアズ・シークレット』にとって重要なものだ。しかし、ブランドのマーケティングを進化させる時を迎えたと思う。現在はブランドの位置付けや、それを消費者にどう伝えていくかを再検討しているところだ」とアナリスト向けの発表会で語った。
「ヴィクトリアズ・シークレット」といえば、“エンジェル”と呼ばれる痩身でセクシーなトップモデルばかりが登場する広告やショーが有名だ。しかし、世界中で「#MeToo」運動が盛り上がり、多様性やインクルージョン(包括性)が推進されている現代においてそうした姿勢を時代遅れだと感じる消費者が増加したこともあり、2017年以降は売り上げが低下していた。19年5月には、レスリー・ウェクスナー(Leslie Wexner)Lブランズ会長兼最高経営責任者が、「ファッションは変化するビジネスだ。成長するためには変化し、進化する必要がある。これを踏まえて、長らく続けてきたファッションショーの開催やテレビでの放映を見直すことにした」と社内に通達し、開催を取りやめる可能性を示唆していた。
1000万~2000万ドル(約10億~21億円)と見られる莫大な費用がかかるショーを取りやめることについて、アナリストや投資家らは一定の評価をしており、発表後に同社の株価は前日比10.13%高の17.17ドル(約1854円)をつけた。一方で、ホリデー商戦を前に、同ブランドの代名詞であるショーの代わりにどのようなマーケティングを行うのかは不透明だ。バーグドーファーCFOは、「ソーシャルメディアを含むさまざまなチャネルで顧客とコミュニケーションを取っていくが、ファッションショーを超える規模のものは今のところ計画されていない」と述べた。