大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。
今日にニュース:P.3「ファッションメゾンが次々とフレグランスに参入」
読み解きのポイント:フレグランスは、世界目線。世界観あるメゾンの参入は当然。
ニュースのポイント
2016年に「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、17年には「ティファニー(TIFFANY & CO.)」、今年は「トム ブラウン(THOM BROWNE)」「トリー バーチ(TORY BURCH)」などがフレグランス事業のスタートを発表。フレグランス市場は、17年の3740億ドル(約4480億円)から、23年には6460億ドル(約7750億円)へ拡大すると英国の市場調査会社は予想する。消費者の目も肥え、参入ブランドは、モノ作りをアピール。いくつかのメゾンでは、フレグランスから化粧品事業を本格始動させており、高価格ウエアやアクセサリーとは違う、単価の低いエントリー商材として、顧客層の拡大を狙っている。
CKRはこう読む!
「1万円以上のフレグランスって、そんなに売れるの?」。この疑問に答えるには、日本市場だけでなく、海外、特に欧米市場の状況を踏まえる必要があります。
Euromonitor International(2017年度版)によると、20年予測、国内化粧品市場1.6兆円のうち、フレグランスが占める割合はわずか3%。それに比して、4.1兆円市場の欧州において、フレグランスが占める割合は49%、同じく米国(3.9兆円市場)では32%と非常に高く、ケタが違います。1.6兆円市場の中国では7%、APAC(1.6兆円市場)では16%と、日本より、やや大きい割合です。
日本では、スキンケアが67%、メイクアップが30%を占めており、アジア全般ではスキンケアの割合が高いのが特徴です。
ファッションメゾンにとって、フレグランスは、ウエア、バッグ&シューズ、ジュエリーに続く一手。規模の大きい欧州、成長が期待されるアジアを中心に参入すべきではないでしょうか。流行り廃りが少なく、パッケージも小さく、一度ポジションを獲得すると継続利用も見込まれる商材です。
もう一つ注目すべき点は、香りは「正確に特徴表現するための言語化が難しい」ということです。「柑橘系」のように類似性で表現するか、「甘い」といった味覚で表現するしかありません。
新規参入する場合、商品特徴をズバリ言葉だけで想起させることは難しく、すでに一定の世界観やイメージを持つブランドに、アドバンテージがあると言えそうです。
世界の2大香料メーカーの一つである、スイスのフィルメニッヒ(FIRMENICH)が2019年9月、上海にフレグランス体験館を開設しました。中国、アジアに眠る潜在需要への期待の表れかもしれません。
フレグランス市場に新規参入するファッションメゾンは、欧米中心にアイコンとなる商品を確立し、拡大が見込まれるアジア市場へ参入して、世界全体で、継続的に収益化できるビジネスを目指すのではないでしょうか。
CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中