※この記事は2019年7月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
地元の百貨店が教えてくれた「あたらしい幸せ」
静岡出身の僕にとって、J.フロント リテイリングの社内コンペ「JFR発明アワード2019」で松坂屋静岡店がグランプリに輝いたのは、大きな喜びでした。同店は「くらしの『あたらしい幸せ』を発明」すべく、バスをイメージした循環型物流システムを提案。商品の受け渡し場所としてのバス停のコミュニティー・スポット化を図りつつ、地元の新鮮な農産物を街の人に、デパ地下グルメを過疎地に届けたいと願います。
首都圏で暮らすようになって以降、帰省するたび「おっ、静岡にもコレが出来たんだ」と「あぁ、ついにアレなくなったんだ」という発見を繰り返し、結果、おらが街も“東京っぽく”なっている気がします。地域の独自性が失われることを悲しく思う一方、それは都会に住む人間のエゴであり、「静岡の人だって、東京とかで話題のお店、行きたいよね」と思うと異論なんて挟めません。自分だって静岡でも「スターバックス」でコーヒーを飲んでいます。
そう考えると、松坂屋静岡店の提案って、素晴らしい。買い物弱者がデパ地下グルメを楽しめるのです。百貨店のおじさん(別に“おじさん”じゃなくても良いのですがw)がバスから現れ、まるでサンタさんみたいにデパ地下グルメをクーラーボックスから取り出し、バス停で待っていたおばあちゃんがそれを受け取る。次のバスまで、2人はちょっとおしゃべり。そして、空っぽになったクーラーボックスにはおばあちゃんが育てた野菜を詰め込んで、おじさんはまたバスに。そんな買い物体験とコミュニティーが形成できたら、地方はもうちょっと頑張れるかもしれません。
「2027年にリニアが開業して東京と名古屋が40分で行き来できるようになったら、中間の静岡は素通り。結果、埋没するだろう」。今年、在日経験をお持ちのラグジュアリー・ブランドのCEOに予告され少なからずショックを受けましたが、こんな提案が実現したら、静岡は静岡らしく頑張れるのではないか?静岡新聞という地方紙で記者をしていた過去も手伝い、このニュースを読み、地元を思い、松坂屋静岡店の素敵なアイデアに“ほっこり”しました。提案の段階で、「くらしのあたらしい『幸せ』」を授けてくれた気がします。
街のシンボルだった百貨店には、地元に添い遂げる義務さえある、そうおっしゃる方もいます。僕は正直そこまで主張できませんが、それでも百貨店が地元に寄り添おうとする姿勢はやっぱり嬉しくなるのです。
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