※この記事は2019年8月2日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
スカッと&モヤっとな2つの新サービス
スポティファイ(SPOTIFY)とイープラスの提携、昨日試しましたが、めちゃくちゃ便利です。スポティファイで音楽を聞いているとアーティスト情報ページにライブ情報が現れ、シームレスに、音楽はそのままでチケットが買えちゃいます。好きなアーティストの音楽を聞いているとライブ情報が届いて、そのチケットが手に入ると分かったら……。BLACKPINKとかポチってしまいそうで恐ろしいです(笑)。
このサービスを体感した時、ファボとリツイートのスゴさゆえ僕のタイムラインにも現れる、新興IT系エグゼクティブが発しそうなコメントを思い出しました。「ビジネスチャンスは、既存のサービスを利用しない消費者に、どうしたら利用してもらえるか考えると成功する」的な発言です。一昨日もクラシコムの青木耕平代表が「僕が新しいプラットフォームを使おうとする時、一貫しているスタンスは、今そのプラットフォームで受けるやり方は何かを考えるのではなく、そこをあまり使っていない人はなぜ使わないのかを考えてその人たちに支持される、僕らきっかけで使ってくれるようになるにはどうしたら良いかを考えている」とツイート。IT系エグゼクティブって「革新的」というイメージが先行しますが、「何を、どうしたら、既存のサービスに満足できないユーザーを満足させられるか?」と、さすが現実的に物事を考えているワケです。
その意味で、スポティファイとイープラスの提携は、ビジネスマンがツイッター上で賞賛しそうな、スカッとするサービスですね。僕自身、今まで音楽はアップル(APPLE)かアマゾン(AMAZON)のサブスクがメイン。正直スポティファイに優位性を感じる機会は少なかったのですが、これにより確固たるメリットが誕生しました。既存のスポティファイには満足していなかったけれど、提携により新たなサービスを付したことがきっかけで、スポティファイを使うようになっちゃうかもしれません。少ない投資で、盤石、ヘビーユーザーでなくても使い方くらいは分かっている既存のサービスに導き、新たなファンを獲得したり既存顧客のロイヤルティーを高めたりする好例と感じました。
一方、こちらも同じく昨日試しましたが、三陽商会の新ブランド「キャスト:(CAST:)」。どうでしょうか?ツイッターを見る限り、否定的、ないしは共感しづらそうなコメントが目立ちますが、それらはいずれも的を得ている気がします。実際30分間、スマホで映画を見ながら画面下部のECへの動線をタップしたりしてみましたが、映画の登場人物の衣装を買うという行為が未知なせいか、スポティファイのような気分の高揚は経験できませんでした。
映画はなかなか本格的だし、ECに至るまでのシステムも「操作の手軽さ」「機能の豊富さ」という本来の意味のユーザビリティーにおいては悪くありません。でも映画とECを同時に楽しみたいと思ったことがないし、ゆえに未知・未体験なサービスに興味を抱くほど超・革新的なワケでもない。実際、本当に商品を買うときは映画から離れてしまうことも手伝い、なんだかモヤっとするんです。映画という作品、ユーザビリティーの高いシステムなど開発費は莫大だったハズですが、そもそもサービス自体がユーザーの求めるものだったのでしょうか?そして30分のムービー、今後もリアル店舗を運営しながら、リリースし続けるのでしょうか?なかなか大変そうです。
とはいえ、新たな一歩を踏み出した勇気は素敵なこと。組織にいくばくかの風穴も開けたことでしょう。コレは愛ある批評と受け止めていただき、今後に注目したいと思います。
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