ファッション

ストライプインターナショナルが設置したSDGs推進室 具体的に何を行う部署?どんな成果があった?

 1年を振り返るにはまだ少し早いが、2019年のファッション業界で、急激に存在感を増したのが“サステナビリティ”の意識だ。「持続可能な産業であるために何ができるか」ということを、さまざまな企業がそれぞれの立場から考えるようになっており、そうした姿勢を持たなければ、産業としていよいよ立ち行かなくなるという危機意識も強まっている。こうした潮流を受けて、「WWDジャパン」11月25日号でも、「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」という特集を組んでいる。ここでは、本紙では紹介しきれなかった、ストライプインターナショナルのサステナビリティ戦略を紹介する。

 ストライプインターナショナルは石川康晴社長の号令のもと、20年1月期の経営戦略としてエシカルやウェルネスを掲げている。それに伴い、19年2月1日の組織改編で、SDGs(国連が30年に向けて設定した持続可能な採択目標のこと)推進室を設置し、SDGsに積極的に取り組む企業というイメージを社内外に発信してきた。初代SDGs推進室の室長に就いたのは、それまで社内でダイバーシティー推進の旗振り役を担ってきた二宮朋子氏だ。

 「われわれの役割は、『SDGsとは何か』という意識の種を社内にまいて、社員それぞれが『自分たちの業務では何ができるか』を自発的に考えるようになるための土壌を作ること。意識の芽が生まれた際には、それを事業部を超えた取り組みにできるよう仕切ることも推進室の役目」と二宮推進室室長は話す。推進室設置から約10カ月が経ったが、この期間でまず行ったのは、ショッピングバッグの有料化(5月1日開始)だった。

ショッピングバッグ有料化を推進

 ショッピングバッグ有料化の動きは、3月にリニューアルした「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY)」東京ソラマチ店で“エシカル”を打ち出したことが始まり。「(有料化は)最初は同店のみの期間限定の取り組みだったが、いいことだから全社で実施しようと推進室が全体の動きをまとめた」のだという。続いて、8月には使い捨てショッピングバッグの代替案の1つとして、オーガニックコットンを使ったエコバッグをブランド横断で企画。直近では、「コエ(KOE)」の事業部から声があがった「グリーン ダウン プロジェクト」に全社で賛同し、ダウンの回収ボックスを店頭に設置するように話をまとめたという。

 SDGs推進にあたって、プロジェクトによっては「実施するかどうか葛藤があった」と二宮推進室室長が話すものもある。SNS上などで、衣服の生産者と消費者やブランドとをつなぐ「ファッションレボリューション」の活動への賛同がそれだ。同活動は、「#whomademyclothes(私の服は誰が作ったの?)」というハッシュタグと共に消費者やブランドが衣服の写真をSNS上で発信し、縫製工場の生産者などがそれに応えて、「#imadeyourclothes(あなたの服を作ったのは私)」のハッシュタグで生産風景を発信するというもの。13年にバングラデシュで発生し、多数の死者を出した縫製工場崩落事故から生まれた活動だという。

 元々は、「レベッカ ブティック(LEBECCA BOUTIQUE)」事業部から「ファッションレボリューション」に賛同し、SNS上で「#whomademyclothes」と共に自社の商品を公開し、工場とつながりたいとの声があがった。しかし、「そもそも服を作って売っている企業として、どんな工場でどのように作られているのかを把握していないということをウェブ上で発信してしまうのはどうなのか。当然知っているものだとお客さまは思っているのではないか」と二宮推進室室長は逡巡した。しかし、最終的には、事業部の意志を汲んで賛同を決めたという。

社内の全ゴミ箱撤去も実施

 9月には、社内からゴミ箱を全てなくすという「ゴミ箱ゼロチャレンジ」を実施。「意義は分かるがあまりにも不便だ」といった意見も出たが、「このチャレンジを行うことで、毎月6000本ものペットボトルを社内ゴミとして廃棄しているということを社内に啓もうし、意識改革することはできた。チャレンジは期間限定だったので今は実施していないが、近日中にまた行いたいと思っている」という。

 サステナビリティ推進は、「ここまでやれば終わり」「これさえ達成すればもう大丈夫」といった類のものではなく、長期的な視点に立ってその時できることを常に行っていかなければならない。だから難しいし、SDGs推進室にも当然ゴールはない。「何か事業を行う際に、『どんな手法だとよりSDGsにかなっているか』を社員一人一人が考えるようになっていかなければならない。同じトップスを企画するにしても、SDGsというフレームワーク(思考法)が頭の中にあるとないとではアウトプットは変わってくるはず」と二宮推進室室長。ファッション業界は生産工程が細かく分断されていることで、サプライチェーン全体のサステナビリティの推進が難しいともよく言われるが、それらを変えていくためにも、第一歩として一人一人の意識改革が重要だと強調する。

 二宮推進室室長は、地元宮崎県の放送局などでアナウンサーとして活躍した後、11年にストライプインターナショナル(当時はクロスカンパニー)に中途入社。12年より人事課長として新卒採用・教育を担当してきた。15年に産休・育休を取得した際には、早稲田大学大学院でMBA(経営学修士号)も取ったというガッツの持ち主。その意欲を買われ、16年に職務に復帰する際にダイバーシティー推進室の旗振り役に就いたという経歴の持ち主。

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