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連載 サステナビリティって何?専門家が答えます。

サステナビリティって何? 専門家が答えます。 連載Vol.13 非財務面の戦略も最重要課題とする花王のESG活動とは

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回は化粧品業界のみならず日本の企業の中でも先進的な取り組みを行っている花王の大谷純子ESGコミュニケーション担当部長に、本格稼働するESG活動を聞く。

WWD:サステナビリティへの取り組みの内容は?

大谷純子花王ESGコミュニケーション担当部長(以下、大谷):弊社は、非財務面での戦略や取り組みも経営上の最重要課題と位置付け、「キレイ アクション」と名付けたESG(環境、社会、ガバナンス)活動を本格始動するため、2018年7月にESG部門を立ち上げました。現在、「サスティナビリティは未来への投資」としてSDGsで掲げられた社会的課題と真摯に向き合い、環境法規制の強化や消費者のエシカルな動きなどを受け止めて、花王らしいアプローチで取り組んでいます。弊社では、消費者ニーズが高まっている持続可能な暮らしを「キレイ ライフスタイル」とし、それを実現するためのESG戦略「キレイ ライフスタイル プラン」を策定していますが、日本語の「きれい」という言葉は、「美しさ」や「清潔」という意味だけでなく、心の状態や生きる姿勢も含まれていると考え、「キレイ」のままグローバルで使用しています。

「包装容器の世界を根本から刷新」

WWD:具体的にはどんな取り組みを行っていますか?

大谷:「商品を販売して終わりではなく、最後の処理のところまで責任を持って考える」ことを使命としており、その一つをよりわかりやすく表現した「私たちのプラスチック包装宣言」を公表しています。包装容器の世界を根本から革新することを目指し、下記の4Rの視点から推進しています。

1. Reduce(減らす) 包装容器を薄くしたり、軽量化したりするとともに、製品を凝縮して容器そのものをコンパクト化することで、プラチック使用量を削減する。
2. Replace(置き換える) 石油由来のプラスチックから、より低炭素で再生可能な植物由来など、持続可能な原料への転換を図っていく。
3. Reuse(再利用する) 生活者が本体容器を繰り返し使用できるよう、詰め替え・付け替え用製品などの新しいタイプの包装容器を開発していく。
4. Recycle(リサイクルする) プラスチック包装容器に再生樹脂を積極的に導入するとともに、暮らしの中でリサイクルしやすい包装容器の開発に取り組んでいく。

ただこれらの問題は弊社単独でできることでも、一朝一夕にできることでもないため、問題解決に向けた取り組みを、同じ考えを持つ企業や団体と共に進めていきたいと考えています。

「より良い暮らしの選択が、環境負荷の軽減に」

WWD:海洋プラスチックゴミが問題視されているが?

大谷:弊社も製品ライフサイクル全体で環境負荷を低減できるよう、海洋プラスチックゴミを含むプラスチックの廃棄問題に取り組んでおり、このプラスチックの包装容器を通した環境負荷の低減に対してはすでに数々の実績があります。その代表が、1991年に販売が始まった詰め替え用製品を生活習慣として定着させたことでしょう。日本では詰め替え用製品の販売比率が約8割となっており、仮に全てが本体容器だった場合と比べると、プラスチック使用量は約70%も削減できていることになります。

ただ、定着したのは「環境保全になるから」と啓発した結果ではなく、消費者が、使った方が便利、使った方が経済的、と思えるような製品を開発した結果。より良い暮らしを送るための消費者の選択が、結果的に環境負荷の軽減につながっているということです。16年には、誰もが詰め替えやすく、環境負荷も低減する「ラクラクecoパック」を発売し、17年には詰め替え用製品が本体そのものとして使用できるスマートホルダーを発売(オンライン限定)するなど、その取り組みはさらに進化しています。現在、100%リサイクル可能なフィルム包装容器の開発・普及を目指すほか、弊社の全拠点から排出されるリサイクルされない廃棄物量をゼロにするといった活動も行なっています。こうした取り組みが評価され、弊社は世界の代表的な社会的責任投資(SRI)指標である「Dow Jones Sustainability World Index」に6年連続で選定されています。

「攻めのESG戦略がカギ」

WWD:ユニバーサルデザインも花王は進んでいますね。

大谷:1970年には、片手で開けられる押し上げ式のキャップをシャンプーで採用し、91年には触るだけでシャンプーとリンスを区別できる“きざみ”を業界で初めてボトルの側面につけました。より世間に広めるために権利を主張せず、“きざみ”は業界標準となり、後に日本主導で国際規格となって世に広まりました。2013年には「プリマヴィスタ ディア」で 細部まで大きく見えるように鏡が拡大鏡になっているファンデーションコンパクトを発売するなど、人に優しいモノ作りに積極的に取り組んでいます。

WWD:サステナブルな製品作りや取り組みをさらに広げていくために、やるべきことは?

大谷: 攻めのESG戦略、花王らしいESG戦略が、グローバルに貢献することにつながると考えています。ビジョンだけではビジネスは成り立ちませんし、ビジネスにつなげるためには社員の新しい発想が必要となります。そのためには、ESG戦略に対する社員一人一人の理解を深めるために顔を合わせたコミュニケーションを重視し、社員が一番のアンバサダーと位置づけて堅実に取り組みを広げていきます。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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