WWDジャパン(以下、WWD):日本と世界のヘアサロンを比べて感じることは?
本田真一(以下、本田):まずは教育が違う。日本ではひとつのヘアスタイルを作るとき、完成までのプロセスを丁寧に教えるが、海外ではアプローチが逆。完成したスタイルだけが示され、そこまでのアプローチは自由。学ぶ側が創意工夫をしながら各々のやり方を模索することで、センスが磨かれていくというわけだ。一方で、ヴィダルサスーンのように極めて論理的な教育法も存在するので、バランスがとれていると思う。日本の美容学校・サロンの教育レベルは素晴らしいが、海外の“センスを磨く教育” をもう少し取り入れてもいいかも知れない。
本田:日本のサロンは、オーナーとスタッフ、先輩と後輩という“縦”のつながりは深く濃いが、“横”のつながりは薄い。対して欧米のサロンは、特にファッションやアート業界の人たちとの交流がさかんだ。私は欧米の環境にいて、異業種の人たちとの人脈、彼らから受けた刺激が、今のクリエイティブ活動に大いに役立っている。そこで、日本での活動のテーマのひとつとして、私の経験を生かし、サロンとファッション業界をつなげる役割を果たしたいと考えている。
WWDジャパン:サロン経営における課題は?
本田:日本の美容師を見て感じたことは、とにかく不健康な人が多いということ。夜遅くまで練習して寝不足で、体に悪いものを食べて……。そうした環境下では、最高のパフォーマンスは発揮できないと考えている。特にうちのサロンのある辻堂は、海が近くにあってサーファーも多く、ナチュラルでヘルシーなヘアスタイルを求められることが多い。そうしたスタイルを、不健康な美容師が提供できるとは思えない。そこで、地元の農家から食材を提供してもらったり、畑を見学して食に関する勉強会を開いたり、スタッフのインナービューティには気を使っている。また、そうした活動を通して健康に関する知識を得るとともに、地元の人たちとの交流を深め、「辻堂の人たちの美と健康をプロデュースするサロン」になりたいと考えている。