世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールなど、7都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。
北欧といえばおいしいコーヒー!世界トップクラスのコーヒー消費量を誇る北欧の国々の中でも、ノルウェーは米「ニューヨーク・タイムズ」誌が絶賛する良質のコーヒーが飲め、世界的コーヒーブームの先駆けとなった国だ。ノルウェー人の67%が毎日コーヒーを飲み、その量は1年で平均160Lにのぼる(Ipsos調べ)。ざっと1日3〜4杯ほど飲んでいるという計算だ。そんなコーヒー大国ノルウェーでは、感度の高い女性たちの間で、コーヒーのカスを再利用した美容法が人気だ。(この記事はWWDビューティ2019年11月21日号からの抜粋です)
というのも、オスロは今年2019年、欧州委員会から「欧州グリーン首都賞」に選ばれモデル都市となった。街をあげて市民がさまざまな環境対策に取り組んでいる。そこで、コーヒーを大量消費するオスロの廃棄物をリサイクルして美容に生かそうというわけだ。
例えば、Gruten(グルテン)という会社はコーヒーのカスでできたコーヒースクラブを販売して話題を集めている。ノルウェーのファッション誌「Costume(コスチューム)」やJennifer Chui(ジェニファー・チュイ)美容ブロガーなども「コーヒー美容」を取り上げ、メディアからも熱い視線を受けている。北欧では今や暮らし方だけではなく美容も「、エコ「」地球環境「」オーガニック」が一般に浸透してきているのだ。
AnetteSelnes(アネット・セルネス)フード&ライフスタイル・ブロガーは、自家製コーヒースクラブをすすめる。「私たちは毎日コーヒーを飲むのだから、自宅で簡単にスクラブが作れます。環境に優しく(プラスチックやビニールなど新しい包装の必要がない)、しかも家にあるものを再利用できるので経済的。毒素のない純粋で自然な製品を手に入れることができ、健康と地球によいなんて、理想のビューティだと思います」と言う。
このコーヒースクラブとはいったいどんなものなのか。簡単に言えば、フィルターでこしたコーヒーのカスを捨てずにとっておいて、オイル(オリーブオイルなど)を数滴加えるだけというシンプルなもの。この自家製コーヒースクラブでスキンケアをすると、肌の角質除去、毛穴に詰まっている古い角質を取り除くという効果が望める。用意するものは、コーヒーのカス1.5dL(デシリットル)、コーヒーのカスを覆うのに十分なオイル(アーモンド、アボカド、オリーブオイルなど)。オプションでエッセンシャルオイル(ラベンダー、ミントなど)3〜4滴を加えてもよい。作り方は1.コーヒーのカスをざるにあげて水気を切る(キッチンカウンターで1〜2日乾燥させるか、オーブンで弱火で温めるのも可)2.ボウルにコーヒーのカスとオイルを入れる(香りをつけたいときには好みによってエッセンシャルオイルを追加。慎重に必要に応じて量を増やす)3.ふたのついたガラス容器でスクラブを保管する(室温可)。1.の乾燥させる工程は、自家製スクラブを長持ちさせるのに大切だが、1、2週間で使い切る場合はその限りではない。
地球環境を意識したサステナブルな社会作りと、豊かな自然を守るために関心を寄せる北欧ならではの美容トレンドといえる。(本文中の円換算レート:1ノルウェー・クローネ=11円)
古澤恭子:フリーランスライター・エディター・ガイド。流行通信社、宝島社、扶桑社での女性誌編集を経て、2010年から北欧ノルウェー在住。ノルウェーを中心に主に北欧の文化・ライススタイルをメディアに寄稿。取材のコーディネート、首都オスロ周辺のパーソナルガイドも行っている