資生堂は、需要が拡大している中高価格帯スキンケア製品の製造工場として、栃木県大田原市に那須工場を竣工し、12月24日より本格稼働を開始する。11月27日に同工場で、竣工式と内覧会が行われた。
那須工場が稼働することにより、最大約1億2000万個の生産能力が加わる。国内36年ぶりとなる新工場で、約350億円を投じ高品質の製造ラインを実現し、将来の技術革新にも対応できるように設計している。本格稼働後は、生産に必要な原料・容器の安定確保のためにサプライヤーとの協働をさらに促進し、中長期的に安定した生産体制の確立を目指す。
竣工式では魚谷雅彦社長兼CEOが登壇。「ここ数年、急成長を遂げた反面、製品の供給不足に陥り、関係各所にご迷惑をおかけしてしまったこともあった。また、4月から横浜・みなとみらい地区に建設したグローバルイノベーションセンターを本格稼働させたが、イノベーションがあっても生産・流通がしっかりしていないと意味がない。そこで急務となった那須工場の建設だが、着工から竣工まで約1年半というスピード感をもって達成することができた。このスピード感は、今後に向けて大きなインパクトとなるだろう」と話した。
同工場には、主に3つの特徴がある。1つは“高品質の徹底追求”だ。クリーンな生産環境や厳しい品質基準と徹底した品質管理、さらに設備稼働状況をリアルタイムで収集し、品質保証と連動させたIoTシステムを導入する。特に製造ラインでは医薬品の製造にも適するレベルまでクリーンな環境を保つという。
2つ目は“ピープルファーストを実現する職場環境の追求”だ。“高い品質を支えるのは人”という考えのもと、これまでにない取り組みを実施している。女性社員が多いことを考慮し、休憩時間でもトイレに並ばずにすむよう、“劇場並み”に多い数のトイレ&パウダールームを設置。女性目線のワークプレイス改革を設計に取り入れ、働く人が誇りを持ち、わくわくできる生産工場を目指している。さらに、将来の成長を実現する物作りの技術伝承を目的に、工場内研究・教育機関として“技術トレーニングセンター”と“技術アカデミー”を設ける。
3つ目は“地域との共生”だ。使用する水には、那須連山の自然のろ過装置により優れた水質となった大田原市の地下水を使用。排水処理においても厳しい基準を設け、地域の方々が満足できるレベルにまで浄化するという。電力は、水力発電によりCO2フリーの電力を採用し、環境に優しい工場を実現している。また、工場を“徹底的に見せる”取り組みを行い、2020年からは工場見学を開始する予定だ。
なお今回の那須工場に続き、大阪茨木工場が20年度下期に、福岡久留米工場が22年度上期にそれぞれ稼働開始予定。今後のさらなる成長性を確保するため、中長期的にさらに安定的な生産体制を目指す。