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連載 サステナビリティって何?専門家が答えます。

サステナビリティって何? 専門家が答えます。 連載Vol.15 世界50億人が製品を使うP&Gはビジネスにしてこその循環・継続

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探る。今回は世界最大の日用消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(以下P&G)の今瀬友佳・広報渉外本部マネージャーに環境負荷を最小限にする取り組みを聞く。

WWD:世界の50億人近い人々に向けて製品とサービスを届けている中で、「企業理念と責任」を基盤にさまざまなことに取り組んでいる。

今瀬友佳プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン広報渉外本部マネージャー(以下、今瀬):当社は世界最大の日用消費財メーカーです。一つ一つの製品が環境に与える影響は小さくても、世界規模で使われればその影響は計り知れないほど大きい。その責任と果たしうる貢献とに鑑みて、さまざまな取り組みを行っているところです。現在は、「社会貢献」「ダイバーシティー&インクルージョン(以下D&I )」「性別による差別の排除」「環境サステイナビリティ」を重点項目として活動しており、それはSDGs(持続可能な開発目標)とも一致しています。

WWD:日本でフォーカスする項目は?

今瀬:「D&I」と「環境サステイナビリティ」ですね。「D&I」においては、昨年話題となった“家事分担をJOBからJOYへ”をテーマとしたメッセージ動画が記憶に新しいですが、社内においてもさまざまな人材が集まることで、多様なお客さまのニーズを理解することにつながります。そこからイノベーションが生まれ、新しい製品やサービスの提供につながることが重要なんです。また、当社は社内で培ったノウハウを300以上の企業・団体に提供し、現場でD&Iを推進するための合同研修会も開催しています。

「『SK-Ⅱ』の滋賀工場は1日最大200トンを節水」

WWD:環境については海洋プラスチックによる汚染対策を講じている。

今瀬:「環境サステイナビリティ」においては、世界的な環境問題である海洋プラスチックの削減にもグローバルで取り組み、すでに海洋プラスチックからリサイクルした素材を25%利用した容器がヘアケア製品「h&s(エイチアンドエス)」で採用されています。日本においても、国内3拠点の工場を筆頭に環境負荷の低減に取り組んでいます。例えば、当社ブランドで世界中に出荷されているほぼ全ての「SK-Ⅱ」を製造している滋賀工場は、今春に新棟を建設しました。ここでは高効率純粋装置を導入したことにより、旧来のシステムに比べ1日最大200トンの節水を実現できました。また、使用電力が少ない最新の高効率ポンプを採用するほか、近々再生可能エネルギーへ切り替える予定です。これらの取り組みも、環境保全を目標とするだけでなく持続していくためには、ビジネスにいかに落とし込むかが大切なんですよね。「D&I」にしても「環境サステイナビリティ」にしても、ビジネスとして成立してこそ循環・継続して、携わる人々のやりがいにもなるわけですから。

「日本の海岸で回収したプラスチックごみをボトル原料にした『JOY』」

WWD:11月にも廃棄プラスチックを活用した製品を発売した。

今瀬:日本国内の海岸で回収されたプラスチックごみをボトルの原料に使用し、台所用洗剤「ジョイ(JOY)」から「ジョイ オーシャン プラスチック」を11月上旬に発売しています。使用した再生海洋プラスチックは、台所用洗剤のボトルとしての耐久性を担保できる最大量である全体比約25%を使用し、ごみ回収からボトルの製造までの全工程を日本国内で行っています。55万本を発売しますが、一つの国で海洋プラスチックを使用する製品としては最大規模の生産量です。

WWD:国際オリンピック協会のワールドワイドオリンピックパートナーであり、東京2020パラリンピックのゴールドパートナーでもありますよね。リサイクル素材で製作する表彰台が話題を集めている。

今瀬:東京2020組織委員会が主催する「みんなの表彰台プロジェクト」に参画しています。6月19日より全国のイオングループ2000店舗で当社のヘアケア「パンテーン(PANTENE)」や衣料用洗剤「アリエール(ARIEL)」「JOY」のほか、詰め替え用製品、他社の同種の使用済み製品のプラスチック容器を回収しています。回収したプラスチック素材で東京2020大会の表彰台製作に再生利用します。SDGsに貢献する大会として注目される2020年をきっかけに、消費者の意識が変わり、新たな習慣がつくられ、それが当たり前になってほしいですね。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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