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銀行強盗とアルマーニに教わった「流儀」 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年6月11日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

銀行強盗とアルマーニに教わった「流儀」

 海外出張が多いことの利点は映画をたくさん見られることです。自宅だと思わず携帯をいじってしまう時間も電波が通じない機上での10時間超の移動では2~3本ずつ映画を見るから、今は自分史上最高に映画通(ただし、アクションを除く)です。

 昨年は「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」「アリー/スター誕生(A Star Is Born)」「グレイテスト・ショーマン(The Greatest Showman)」、そして「メリー・ポピンズ リターンズ(Mary Poppins Returns)」「グリーンブック(Green Book)」と、主人公が自分を鼓舞するように歌い上げる映画が多く、勇気をもらい、飛行機を降りる時は意気揚々としていました。

 今春は、50代後半の女性(ジュリアン・ムーア)が再び恋をする「グロリア・ベル(Gloria Bell)」、有能だけど学歴がない女性(ジェニファー・ロペス)が経歴を偽って大企業に採用されて活躍する「セカンド・アクト(Second Act)」、銀行強盗の未亡人たち(ヴィオラ・デイヴィス)が犯罪チームを結成して夫たちがやり残した仕事にとりかかる「ロスト・マネー(WIDOWS)」など、人生後半を迎え悩み、前へ進もうとする女性を題材にした作品が印象的でした。

 同じく人生後半が主題ですが、主役が男性なのが「さらば愛しきアウトロー(The Old Man & the Gun)」です。実在した銀行強盗役を演じる82歳のロバート・レッドフォード(Robert Redford)が最高にかっこいい!これはオススメです。レッドフォード演じる、立ち振る舞いが紳士的な銀行強盗フォレスト・タッカーは終始スーツ姿で、それも見どころですがセリフもいい。ある場面でタッカーが「それがスタイルだからさ」と言うのですが、日本語字幕ではスタイルを「流儀」と訳していて、ツボでした。最近あまり使わない言葉「流儀」ですが、ファッションが提案できるのも、実用やトレンド以上にこの「流儀」だったはず。スーツとセリフからそんなことを考えました。

 「流儀」といえば、5月末に来日したデザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)は記者会見で、その「流儀」をまざまざと見せつけました。会見に来ていたメディアは幅広く、「婦人画報」「フィガロジャポン(madame FIGARO japon)」「エスクァイア(Esquire)」「センス(SENSE)」「日本経済新聞」など各誌紙が自分たちの「流儀」に合わせた質問をするのですが、アルマーニ氏はどの質問にも名答を返してくるのです。中でも印象的だったのは、「メンズ・イーエックス(MEN'S EX)」からの「スーツを着る男性のエレガンスとは?」という質問への答えです。いわく「コーディネートではなく、身のこなしが大切。骨格をエレガントに見せ、落ち着いた話し方をすること」と。「骨格をエレガントに見せ」とは!!予想の斜め上を行く回答です。

 タッカーは、「楽に生きるなんてどうでもいい、楽しく生きたい」と語るのですが、たぶんこれがこの銀行強盗の「流儀」の源。「流儀」を確立しつつ、人生を楽しみ、前を見続ける人が一番強い……80歳を超えたレッドフォードとアルマーニの2人に教わりました。レッドフォードの俳優引退作になるといわれている「さらば愛しきアウトロー」は7月12日日本公開です。

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