※この記事は2019年5月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
インディテックス CEOの交代について
今回はインディテックス(INDITEX)の最高経営責任者(CEO)の交代についてです。インディテックスはご存知でしょうか?
社名はあまりなじみがないかもしれませんが、簡単に言えば「ザラ(ZARA)」の会社です。売上高は、企画から生産、販売まで一気通貫で行うアパレルSPA企業の中ではナンバーワン。1963年にスペイン北西部コルーニャでドレスメーカーとしてアマンシオ・オルテガ(Amancio Ortega)が創業。75年に最初の小売店舗として「ザラ」を開店という私と同じ年(!)の企業で、2019年1月期の売上高は261億ユーロで優に3兆円を超えます。
H&Mやファーストリティリングよりも規模も利益率も高い優良企業ですが、「ザラ」だけで2兆円を超えるので、ブランド規模としては「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「グッチ(GUCCI)」よりも上です。そのすごさについては「ユニクロ対ザラ」(日本経済新聞社)の著者、齊藤孝浩氏の「WWDジャパン」紙面での連載などが詳しいのでここでは触れませんが、インディテックス のCEO職を創業者から05年に引き継ぎ、14年間けん引してきたのがパブロ・イスラ(Pablo Isla)会長兼CEOです。
この間、インディテックスは毎年ほぼ10%の売り上げ成長をキープしてきました。19年1月期も為替の影響を加味しなければ10%に近い成長率をキープしています。イスラ氏は「ハーバード・ビジネス・レビュー(HARVARD BUSINESS REVIEW)」誌による“優秀なCEOトップ100”で17年、18年と2年連続首位を獲得しており、経営者としても高い評価を得ています。
このたび、そのイスラ氏の後任となる次期CEOが発表されたわけですが、最高執行責任者(COO)の昇格という、なんとも安定感のある異動!インディテックスほどの大企業になると必ず派生するトップの後任問題ですが、指名されたカルロス・クレスポ(Carlos Crespo)氏(48)は01年にインディテックスの財務部門に入社。すでに20年近くインディテックスで働いており、その成長を支えてきた人物です。就任1カ月前のアナウンスに見られるように、きっとなんの混乱も引き起こさずに、インディテックスの成長を維持するのではないでしょうか。
そして、イスラ氏も会長職を継続します。なんなのでしょうか、この盤石感……。個人的に、成長させてきた企業をスムーズに後任につないでこそ、本当に優秀な経営者だと思っています。
リリースベースのあっさりしたニュースでしたが、インディテックスの強さを見たような気がします。新CEOがどんな手腕を振るうのか、とても楽しみです。
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