――サロンプロデューサーとして大事なことは?
美容師をクリエイターとしてとらえ、彼(彼女)らに異業種のクリエイターたちとの交流の場など、輝ける場を提供することだと考えている。実際、彼らのクリエイティビティを養うため、彼らがやりたいことを企画書にまとめてさまざまな企業にプレゼンテーションして回った。結果としてバルスの方から声を掛けてもらい、「バルス ストア(BALS STORE)」内のサロンとして、新たな展開に進むことができた。
また最近では、伊勢丹新宿本店とコラボレートして「ヒアカ アヴェダ 伊勢丹新宿店」をオープンしたが、それを可能にしたのも、美容室業界以外の企業とのネットワークだ。そういったネットワークを築くことも、サロンプロデューサーの仕事だと思っている。
――サロンをオープンするときに重視することは?
コンセプト作りが重要だと思う。私は、マーケティングに基づいて新店舗のコンセプト作りを行い、サロンが完成した後は店長たちとともにサロンを作り上げている。例えば「ヒアカ アヴェダ 伊勢丹新宿本店」は、「中目黒や自由が丘の雰囲気を新宿で再現する」「メンズに受け入れられるメニューを作る」という、2つの大きなミッションを用意した。メンズに関しては、「男性はサロンにいても時間と効率性を大切にしたいと考えている」という前提のもと、充実した時短メニューを設けるようにした。そうしたミッションを考えた後は、サロンプロデューサーとして、彼らが輝ける次なるステージを模索する仕事に戻る。
スタッフには“プロのお客さま”としてのアドバイスを行っている。私は美容師ではないが、だからこそ、先入観のないお客さま目線からサロンを見ることができる。例えば先日、サロンを訪れたとき、スタイリストデビューしたばかりの女性スタッフがいた。短いスカートをはいていた彼女を鏡の前に連れて行き、「そのスカートはかわいいし、アシスタントとしてはオーケー。でも自分が新客で、君が担当スタイリストとして登場したら、安心して任せられない」と話した。現場では気付けない、お客さま目線からの情報を提供することも自分の役割だ。
――サロンの課題は?
最近の美容室業界には、美容師のキャリア形成を無視した業態も増えてきた。私のところにも、目先のメリットからそうした業態のサロンに移り、あるときふと気付いて、将来を考えて元の業態に戻りたくなったという美容師が相談に来るが、正直どうしていいかわからない。自サロンのスタッフも含めて、「美容師のキャリア形成」は大きな課題だと思う。