イタリア発「ポメラート(POMELLATO)」のクリエイティブ・ディレクターであるヴィンチェンツォ・カスタルド(Vincenzo Castaldo)が来日した。来日の目的はポメラートブティック銀座店の視察とインスピレーションを得るため。プライベートも兼ねての来日で、東京・表参道や中目黒などでの散策も楽しんだようだ2002年にポメラートに参加し、長年「ポメラート」のクリエイションに関わってきたカスタルドに話を聞いた。
WWD:ファッション業界からジュエリー業界にキャリア転換を図ったのは?
ヴィンチェンツォ・カスタルド「ポメラート」クリエイティブ・ディレクター(以下、カスタルド):ある意味、運命的だったのかもしれない。「ポメラート」に出合い、ジュエリー業界に移るべきだとサインを感じた。17年間デザインを手掛けているが、今でもワクワクし、初日と変わらない情熱を持っている。
WWD:ファッションとジュエリーの関係についてどう思うか?
カスタルド:両方ともクリエイティビティーを表現する手段であることには違いはないが、ファッションの方が驚かせる要素が大きく、スピーディー。6カ月ごとにストーリーも変わる。ジュエリーの場合は伝統を踏襲しながら印象付けるクリエイションだ。また希少性が高く、寿命が長く引き継がれていくもの。
WWD:「ポメラート」はジュエリー業界にプレタポルテの概念をもたらしが、プレタポルテ・ジュエリーであるために必要な要素は?
カスタルド:日常使いできる着け心地のよさと、一生大切にしてもらえるようなデザイン。だから、伝統を守りながら新しい美しさを提案するために、既成概念を破るべき。女性と共犯関係が持てるジュエリーでなければならない。なぜなら、ジュエリーは誘惑する武器の一つだから。
WWD:クリエイションのインスピレーション源は?一番のこだわりは?
カスタルド:さまざまなものからインスピレーションを受ける。理論では説明できない。アート、デジタルデザインの色や動き、インダストリアルデザインのフォーム、インテリアなど。イタリア人デザイナーのジオ・ポンティ(Gio Ponti)は大好きだ。美術学校で全体のバランスなどをよく観察することが大切だと学んだ。例えば、この花びらの角度がどのように全体に調和をもたらしているかを、じっくり観察する。日本の生け花などは、おのずと洗練された調和が生まれる最たるものだと思う。観察することがデザインに役立っている。
WWD:「ポメラート」が掲げる“ニュープレシャス”とは?
カスタルド:“ニュープレシャス”とは、伝統的なジュエラーとは違う軸のクリエイションを提供すること。勇気がいるよ。「ポメラート」は以前使われていなかったセミプレシャスストーンをいち早く採用し、その使い方によって価値を上げたんだ。今ではどのジュエラーもセミプレシャスストーンを使い始めた。
WWD:「ポメラート」が他のジュエラーと違う点は?
カスタルド:ジュエリーの基本は踏まえつつ、チャレンジングなクラフツマンシップに挑む点。ジュエラーとしての安全地帯にとどまらず、いろいろなことに挑んでいるよ。クラシックのピアニストが突然、即興の演奏をするイメージだ。アトリエには優秀な職人がいるから、日々、楽しみながらお互いにチャレンジをしている。デザインは頭の中で描くものだけど、それを形にするのが職人だからね。彼らはまさににアーティスト。芸術的な手を持っている。
WWD:「ポメラート」は多くの色石を使用しているが、それらの調達方法は?
カスタルド:ジェムマスターという石の専門家がいて、世界中の市場をモニタリングし、鉱山から直接優れた原石を買い付けてカットしている。パヴェセッティング用の石や特別なもの以外は、“ヌード”や“カプリ”をはじめ全て「ポメラート」のオリジナルカットだ。石はその性質を十分に理解してカットしないと美しさが損なわれるから、専門家が関わっている。オリジナルカットを生み出すという点も“ニュープレシャスのコンセプト”の一つだ。