俳優の高良健吾やモデルの琉花、バンドD.A.N.(ダン)やnever young beach(ネバーヤングビーチ)の安部勇磨や鈴木健人、ミュージシャンのヤン・メイリン、映像クリエイターの山田健人、写真家の草野庸子など、ミュージシャンやクリエイターが集う美容室「テトロ(TETRO)」は、渋谷と代官山の間くらいの、それほど人通りが多くない場所にある。必ずしも行きやすいともいえないその場所に多くのクリエイターがなぜ通うのか。カルチャーメディア「EYESCREAM」で自身の対談連載を持ち、ヘアメイクアップアーティストとしても活躍する「テトロ」の森田康平ヘアスタイリストに話を聞いた。
WWD:森田さんのもとには俳優やモデル、ミュージシャンが多く通っている。どのようなきっかけで通うようになったのか?
森田康平(以下、森田):何人かのミュージシャンに関しては、もともと僕自身が音楽好きで、いろいろなライブを観に行っていて、「いい音楽やっているから、ヘアスタイルもイケてる方がいいでしょ」と思って声をかけたんです。それでお店に来てくれるようになり、そこから口コミや紹介でまた新しいミュージシャンが来てくれるといった感じで広がっていきました。今はnever young beachの安部君や鈴木君、D.A.N.のメンバー、ZOMBIE-CHANGとして活躍するメイリンさん、踊ってばかりの国の下津(光史)君などが来てくれています。俳優やモデルは、ヘアメイクの仕事で出会ってお客として店に来てくれるようになった人が多いです。僕以外のスタッフもヘアメイクとして活動していて、お店としてもミュージシャンをはじめ写真家や映像作家などクリエイターのお客さまが多いです。
WWD:「テトロ」はオープンしてどれくらい経つ?
森田:約4年です。以前、一緒の美容室で働いていた6人でスタートして、全員がスタイリストで、最初から最後まで1人で担当します。スタッフはみんな音楽や映画、アートが好きで、「自分たちでやりたいことをやろう」ということで「テトロ」を立ち上げました。もともと美容師ってファッションや音楽好きな人が多いのに、ファッションや音楽の業界と全然つながっていないし、むしろ離れてしまっている。美容師の業界ってある意味では閉鎖的なところもあって、業界誌で美容師が個性的なヘアデザインをつくったりしているけど、僕自身はまったくそこには興味がなく、“美容師はアーティストではなくあくまで職人”という考え。その人の個性が際立つように、自然な感じを意識してヘアデザインはしています。そこがミュージシャンをはじめ、クリエイターたちに支持されているのかなと思います。
WWD:「テトロ」では写真集なども積極的に制作している。
森田:そうですね。集客サイトはやっていないので、その分の予算を使って1年に1冊のペースで写真集を作っています。それこそ自分たちがやりたいからやっていること。これまで3冊作っていて、1冊目はタカコ・ノエルさん、2冊目は草野庸子さん、3冊目は嶌村吉祥丸さんという人気の若手フォトグラファーにお願いしました。それぞれに1冊目はCD、2冊目はレコード、3冊目はカセットを付けました。曲はお客さまとして来てくれている人たちにお願いしています。次は、「テトロ」に来てくれているアーティストの書き下ろしの曲を集めてコンピレーションを作ろうと考えています。
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WWD:場所的には渋谷と代官山の間で閑静な場所だが、この場所はすぐ決まった?
森田:僕らはあまりにぎやかな場所が好きではなくて、このあたりは渋谷だけど人通りも少ない。代表の舞人とも「この辺っていいよね」って話していて、見つかったのがこの場所です。近くにあまり美容室がないことも気に入っています。
WWD:「EYESCREAM」では自身の連載を持っているが、そのきっかけは?
森田:何度かヘアメイクとして関わっていて、最初は冗談のつもりで「うちに来ている人たちと対談をやったらおもしろいと思いますよ」って提案したら、そこから連載が始まりました。
WWD:2店舗目も考えている?
森田:僕らは少ない人数で意思疎通がしっかりと取れているのが強みで、「よくないことはよくない」と何でも言える関係。それが店舗を増やすことで薄れるのが嫌で、今のところ大きくしようとは考えていません。
WWD:今後やっていきたいことは?
森田:僕らの友だちとかお客さまにはすごく才能を持ったクリエイターたちが多くいて、そういった人たちと何か大きなムーブメントを起こしていきたいですね。そこに裏方として関わっていければと思っています。
■TETRO
時間:月~金曜日 11:00〜20:00 / 土・日・祝日 10:00〜19:00
住所:東京都渋谷区鶯谷町4-1 アバヴ渋谷 3F