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連載 サステナビリティって何?専門家が答えます。

サステナビリティって何? 専門家が答えます。連載Vol.19 英国ファッション教育最前線「デザインやクリエイティビティーの在り方を再考」

 サステナビリティに取り組まない企業は存続できない――といわれる一方で、具体的に何をどうしたらいいのか分からないという声も聞く。そこで「WWDジャパン」11月25日号では、特集「サステナビリティ推進か、ビジネスを失うか」を企画し、経営者やデザイナー、学者に話を聞きその解決策を探った。今回は、この夏までロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(LONDON COLLEGE OF FASHION, UAL、以下LCF)で学長を務め、今秋からゴールドスミス大学(GOLDSMITHS)で副学長に就いたフランシス・コーナー(Frances Corner)教授に聞く。

WWD:なぜこの1~2年でサステナビリティは大きなムーブメントになっているのか。

フランシス・コーナー教授(以下、コーナー):簡単にいえば自覚し始めているから。また、環境保護団体エクスティンクション・レベリオン(Extinction Rebellion)のデモや16歳の環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)らの影響は大きいわね。今の学生は以前に比べてさまざまな情報を得やすくなっているので環境問題にも詳しい。そんな彼らが今本当に真剣に考えていて、チャレンジしている。

私たちは今、余裕がある生活を送っていると思っているけれど、実はそうではない。環境、資源、人権など全てはつながっていてさまざまな問題が起こっている。例えば、気候変動の深刻化で農業への影響が大きくなっているし、移住せざるを得ない人々も増えている。自力で生活できなくなっている人もいる。ファッションはその中で大きな役割がある。

WWD:学生はどういうことに興味を持っているのか。

コーナー:ファッションが大好きであることは間違いなく、地球に対して責任あるファッションに興味がある。例えばLCFを卒業したベサニー・ウィリアムズ(Bethany Williams)やセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins, UAL)出身のフィービー・イングリッシュ(Phoebe English)はまさにこの問題に取り組んでいる。彼らだけではなく、多くの若手デザイナーはサステナビリティを念頭に置いてモノ作りをしている。先日会ったパキスタンやコロンビア、パレスチナ、ジンバブエのデザイナーたちもそう。彼らは、ファッション産業の大きな課題の一つである廃棄に取り組んでいて、彼らの母国の技術を生かした廃棄を出さないデザインに取り組んでいる。

今、東京、ロンドン、香港、ニューヨーク、パリ――どの都市でも同じ「シャネル(CHANEL)」や「プラダ(PRADA)」が売られているけれど、私はこの面でもサステナビリティという概念を生かせないか考えている。例えばそれぞれの国の技術や文化を生かして、ローカルで生産を行えないかとね。

「今、重要なことは循環型ファッションに乗り出すこと」

WWD:ファッション業界が取り組むべきことは?

コーナー:技術で解決できることは増えてきたけれど、そのボリュームが足りていない。また、一つのことではなく全体を考えなくてはならない。単純に一つの回答なんてあるわけない。

ただ、どの企業も取り組むべきことは、商品をどのように作り、どう廃棄するか――どのようにしたら循環できるかを本気で考えること。つまり、処理方法を考えながらデザインを進めなければいけない。

そして私たち消費者はどこから責任を負うかを考えなければならない。どれだけ買うのか、どのように使うのか、そのアイテムはどこから来たのか。

業界の挑戦は、消費者がとっかえひっかえ新しい服を買わなくてもファッションへの感動や愛情をどうやったらキープできるかを考えることね。今はたくさん作ってたくさん買わせているけれど、消費者は責任を感じてこの仕組みに違和感を覚え始めている。ファション業界はクリエイティブな解決策を見つけなければいけない。

私がLCFからゴールドスミスに移った理由は、ここにはファッションやアート、デザインだけではなく、心理学、政治学、法学など幅広い学部があるから。それらすべての分野で、私たちは人権や環境問題と積極的に向き合っていかなければならない。そして、仕組みから考え直して改善策を提案できるような学生を育てて、新しい技術や方法を求めている企業に送り込む――これが私の出したソリューションよ。

「教育には人間を変える力がある」

WWD:教育から変えていくと。

コーナー:ええ。私自身は人間にとても興味があり、刑務所やコミュニティーグループで働いたことがあるけれど、教育には人間を変える力があると実感した。

ブレグジットの話はしたくないけれど、それが起こった理由の一つが、社会が平等ではなくなってきているからで、その背景にはグローバライゼーションや産業技術の変化などいろいろある。社会全体を持ち上げていかなくてはならないけれど、どのように解決していくのか――ゴールドスミスはそうした(アカデミックな)分野に強い。今、デザインプロセスを考え直している教授は、神経科学や心理学の研究者と協力し合いながらクリエイティビティとは何かを問うリサーチを行っている。それをどうビジネスに役立てるのかが重要ね。

私たちはなぜファッションが好きなのか。何かを消費することだけではないはずで、それについても研究している。ゴールドスミスはアイデアの発達プロセスを重視しているし、そのアイデア自体に責任感を持つことも大切にしている。人間をテーマとして、社会の中での人間を研究している。

「自分の廃棄物は自分で処理することに取り組むべき」

WWD:消費者も変わらなければいけない。

コーナー:私にとって消費者というテーマは、やはり教育と知識につながる。細かいところまで自分が買ったもののインパクトが分かれば、きっと消費も変わるはずだ。チャリティーショップに持って行った服がアフリカでさらに安く売られてローカルの企業に悪影響を及ぼしていたら、どうだろう。今、ルワンダではもう受け取らないと言い出している。インドネシアに送られるプラスチックの山と同様に「要らないものを送るな」とね。中国も断った。

自分の廃棄物は自分で処理しましょうという当たり前のことに取り組むべき。考えて購入して処理も自分でできるようにすること。重要なのは、私たち消費者がどうするか。

WWD:注目している企業は?

コーナー:ケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)は考えが明確で、地球上の人間のためにどうすべきかを考えている。プロダクトの影響だけではなくて、サプライチェーンを考え直したり、女性のための基金を立ち上げたりしている。雇用条件はもちろんだし、関連企業も搾取しないし、サプライチェーンへはその教育から始めている。

WWD:あなた個人について教えてほしい。どんな服を着ていて、どのようなことを日々行っている?

コーナー:いつも「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」を着ている。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」も着るけど「ヨウジ」は欠かせないわね。あまり買わずに古いものをキープしている。15年前の服も着ているけど、今でも「かっこいいね!」と言われることがある。値段は高かったかもしれないけど何度着用していたかを考えたら高くないわよね。今日もコートとトラウザーは「ヨウジ」でシャツは「ブラック・コム デ ギャルソン(BLACK COMME DES GARCONS)」。

使い捨てのプラスチックは使わないようにしている。お肉はもう長いこと食べてないわね。お魚は少々食べるけど。他の環境への害も減らす努力をしている。

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