岩手県奥州市産の無農薬米を原料にした石けんや消臭スプレーを販売するファーメンステーション。日本人の主食である米を全て手作りで発酵させて作る自然派コスメは、原料は減反政策などで休耕田となった水田をよみがえらせ、そこで収穫した非食用米を使用している。この休耕田を地域活性につなげるビジネスモデルは世界で注目を集め、2014年は数々のビジネスアワードを受賞した。オーガニックコスメの新たな未来を切り開くファーメンステーションの酒井里奈・社長に今後の展望を聞いた。
WWDビューティ(以下、WWD):ファーメンステーションの製品特徴は?
酒井里奈・ファーメンステーション社長(以下、酒井):ファーメンステーションは、自称“発酵ベンチャー”です。日本に古くから伝わる発酵技術と、先進のバイオテクノロジーを組み合わせた商品開発を行っています。そこから生まれたのが、石けん「奥州サボン」と消臭スプレー「コメッシュ」です。使用する原料となるお米は、岩手県奥州市胆沢(いさわ)の農家さんが、減反政策の一環などで休耕田となっていた水田で無農薬栽培したもの。非食用米といって、食卓には上らないお米ですが、栄養分はたっぷり。これを丁寧に発酵させたのが「もろみ」で、ここからエタノールを抽出します。エタノールは「コメッシュ」に、残り粕の「米もろみ粕」は「奥州サボン」の原料やにわとりの飼料となり、製造過程で廃液を出さない製法にこだわっています。
酒井:「コメッシュ」は、米、麹、酵母、水というシンプルな原料から生まれています。つけたてはほんのり日本酒のような甘さが香りますが、すぐに嫌な臭いとともに消えてくれます。これは、お米と天然のバクテリアのおかげです。「奥州サボン」は日本有数の麹菌・微生物の会社である「秋田今野」から提供いただいた玄米麹を使用しています。もろみの保湿効果に加え、オリーブ油やホホバ油など、植物由来の潤い効果に優れた天然の美容成分も配合し、やさしく洗いながらしっかりと肌に潤いを留めてくれます。
WWD:14年は、ビジネスモデルにも注目が集まりました。
酒井:ファーメンステーションでは、化粧雑貨の製品開発・販売だけでなく、エタノール生成過程で発生する残さを養鶏農家に提供している。また農家さんと提携し、農業の体験ツアーを組んだりと、休耕田を起点とした地域活性化を目的とした包括的なビジネスモデルを展開しています。14年は、日本政策投資銀行第3回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション特別賞「地域イノベーション賞」などの賞をいただいたり、日本起業家賞2014ファイナリストに選んでいただいたりしました。
WWD:15年の展望は?
酒井:販路を広げることです。現在は、福島屋六本木店とオンワードのセレクトショップ、ファーメンステーションの公式ウェブサイトなどで販売していますが、ビジネスとして確立させるためには、より多くの人に手に取ってもらわなければいけません。また15年は、春に98%国産原料を使用した虫除けスプレーを発売する予定です。こちらはエタノールと植物の力を掛け合わせたもので、大人の女性からお子さんまで、安心して使える処方を採用しています。原料の残りの2%には、エッセンシャルオイルとしてフェアトレードで調達した椿油を使用する予定です。この商品は、思いに共感してくれた人たちからインターネット上で資金を募るクラウドファンディングで資金を調達し、製造・販売しようと考えています。この他にも、新米のみを使った限定商品など、アイデアは尽きません。これからも日本の発酵技術を生かした魅力的な製品を生み出し、人と地域と地球をつなぐ企業活動を続けていきたいと考えています。
PROFILE:富士銀行(現みずほ銀行)やドイツ証券などの金融機関に約10年間勤務した後、社会貢献事業に興味を持ち、東京農業大学に入学。2009年にファーメンステーションを立ち上げた
■催事案内
期間:2015年1月6~12日
場所:「TOHOKU POP UP SHOP」ルミネ新宿店2階
期間:2015年1月21日~27日
場所:松屋銀座 1階イベントスペース「女性が選んだスグレもの展」