パリを拠点とするデザインユニット、ロナン&エルワン・ブルレック(Ronan&Erwan Bouroullec)兄弟のデザイン活動は、都市計画から家具、テーブルウエア、アクセサリーまで幅広く、「ヴィトラ(VITRA)」「カッシーナ(CASSINA)」など多くの有名ブランドにデザインを提供し、作品はパリのポンピドゥー・センターやニューヨーク近代美術館をはじめとする主要な美術館に収蔵されるなど、現代のフランスを代表するデザイナーだ。現在はフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者による旧証券取引所の大改装事業に関連し、安藤忠雄建築の美術館の内装を手掛けて注目を集めている。
このたび、アイウエアブランド「ジンズ(JINS)」が世界のトップデザイナーとコラボレートしたシリーズ「ジンズ デザインプロジェクト」の第5弾に参加し、初のアイウエアデザインに挑戦した。「ジンズ」と組んだ理由は何か、来日した2人に聞いた。
WWD:「ジンズ」とのコラボレートを引き受けた理由は?
ロナン&エルワン・ブルレック(以下、ブルレック):これまでも複数の企業からアイウエアデザインを依頼されたことがありますが、全て断りました。しかし、「ジンズ」は他にない画期的なコンセプトを持っています。さまざまな人に似合う多彩なデザインのラインアップはクオリティーが高く、しかも誰にでも手が届く価格で提供され、即日加工されて手に入るという革新性に共感して誘いを引き受けました。ヨーロッパでも人気が高い「ユニクロ(UNIQLO)」や「ムジ(MUJI)」と共通する独特なアプローチを感じます。このようなアイウエアブランドは、世界でも珍しいと思います。
WWD:「ジンズ」のことは、以前から知っていた?
ブルレック:これまで「ジンズ デザインプロジェクト」に参加したジャスパー・モリソン(Jasper Morrison)、コンスタンティン・グルチッチ(Konstantin Grcic)、ミケーレ・デ・ルッキ(Michele De Lucchi)、アルベルト・メダ(Alberto Meda)はみんな知人なので、評判は聞いていました。
WWD:さまざまなデザインを手掛けているが、アイウエアのデザインの難しさは感じた?インスピレーション源は?
ブルレック:プロジェクトごとに届けたいデザインの目的は異なりますから、デザインする対象を比較したことがありませんし、ヒエラルキーは感じていません。また、何をデザインするにしても、決まったインスピレーション源は持っていません。インスピレーションとは最初のきっかけであるかもしれませんが、いわば“土”のようなもので、デザインはさまざまなアイデアを“種”のようにまいて、それに改善や修正を加えながら成長させていくものです。
WWD:「ジンズ×ロナン&エルワン・ブルレック」のコンセプトは?
ブルレック:従来の「ジンズ」と同じく、まず老若男女のさまざまな人に似合うデザインであることです。好きなデザインが必ず見つかる、誰でも選べる、しかも似合う、万人のための眼鏡です。4型16種類のコレクションはグラデーションのように繊細にデザインと色を変化させ、誰にでも似合うスタイルが見つかるように商品群を組み立てています。重要なポイントは、その人の今のスタイルを壊すのではなく、引き立てるものであることです。
WWD:商品のテーマは、日本語の“SUGATA(姿)”だ。
ブルレック:いろんな顔立ちや体形の方々のなりたいスタイルに似合うアイウエアという思いを込めました。デザインの美しさだけでなく、その人の立ち居振る舞いや所作をエレガントに見せてくれるものです。フランス語で表現するなら“ALLURE(誘惑、魅惑)”がふさわしいかもしれません。
WWD:どんなスタイルに似合うデザイン?
ブルレック:「ジンズ×ロナン&エルワン・ブルレック」を服に例えるなら、完璧な白のTシャツです。自然な気持ちで気軽に着て、使い勝手がよく、流行に関係なく長い期間愛用することができる。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のスカーフとコーディネートしても似合う--。これこそ「ジンズ」が求めているスタイルだと思います。