※この記事は2019年6月12日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから。
「エルメス」の“休んで攻める”戦略
久々に胸熱なニュースでした。「エルメス(HERMES)」の米国法人が全米の従業員750人を集めて懇親会って、すごくないですか?何がすごいって従業員をニューヨークに集めるために全米の店舗を3日間も休業したということです。
店舗を全店3日間休業するって、これは一大事ですよ。非常事態。マディソンアベニュー店やミートパッキングの新コンセプトショップはもちろん、シカゴ、マイアミ、ロデオドライブなど、あらゆる「エルメス」がお休み。地元の人はともかく、店を訪れることを楽しみにしていた旅行者にとっては、まさかの休業だったことでしょう。
2018年度決算では南北アメリカ大陸でしか売上高が出ていませんが、店舗数からざっと計算すると米国売上高は「エルメス」全体の約12%です。単純に日割りで計算すると3日間の売上高は7億円強。なかなかのロスです。
加えて750人の従業員のニューヨークまでの渡航費や宿泊費はもちろん会社持ち。費用も莫大でしょう。記事にもありますが、社員のモチベーションと結束力を上げるのに大いに役立つことは間違いありません。
アメリカでの「エルメス」はほとんど路面店だからこそできたことであるとも思います。日本だったら、主要な百貨店や商業施設内の1階に構えている店が多いので、どう考えても全取引先の理解を得るなんて難しいでしょうね……。
奇しくもほぼ同じタイミングで、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が同じニューヨークの名建築TWAフライトセンターで世界中のセレブやプレスを集めて華々しくクルーズのショーを発表していたわけですが、お金の使い方が極めて対照的だなぁと感じました。
米国では特にこうした休業は社員を大切にするブランドの姿勢の表れとして受け入れられる土壌ができてきているように感じます。従業員を大切にする「エルメス」で買い物することに満足を感じる人もきっと多いはず。“休んで攻める”「エルメス」の戦略、あっぱれです。
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